デブ猫

震災編 祈りの朝【上】

2023/01/14 13:35

 おおくのひと犠牲ぎせいとなった阪神はんしん淡路大震災あわじだいしんさいから、もうすぐ28ねんがたちます。


 ひろ世界せかいるためにたびつづける「かなしきデブねこちゃん」の主人公しゅじんこうマルは、いま神戸こうべにいます。最初さいしょにマルが愛媛えひめから兵庫ひょうごにたどりいたとき、〈神戸こうべ栄光えいこう教会きょうかい〉の仲間なかまたちがうたっていたきょくをおぼえていますか?


 今回こんかいは、そのうためられた神戸こうべのネコたちのおもいをつたえる「震災編しんさいへん」をおとどけします。


◆    ◆


 吾輩わがはいも“ネコ”である。


 名前なまえは、マル。


 兵庫ひょうご五国ごこくたびした史上しじょうはつ三歳さんさいのオスねこひたいにクールな「はち」のはいった、通称つうしょう“ハチワレ”だ。


 みなとほうからかぜいている。何百なんびゃく何千なんぜんというロウソクのれている。


 オレはのっそり身体からだこした。


「え、ここはどこ?」というこえおうじたのは、神戸こうべ栄光えいこう教会きょうかいらすシンディだ。


きた? ここは神戸市こうべし中央区ちゅうおうく東遊園地ひがしゆうえんちという公園こうえん昨日きのう、マルはここでたでしょう?」


 そうわれておもす。昨夜さくや教会きょうかい屋根裏やねうらで、仲間なかまのネコたちとうたっていた。


 そして、いつものように『満月まんげつゆうべ』をうたげて、かいわろうとしたときだった。


「ねぇ、どうしてみんなはこのきょくをこんなに大切たいせつうたうの?」


 その理由りゆうを、オレはまだおしえてもらっていない。




 リーダーのマイケルが微笑ほほえんだ。


「そういえば、まだマルにこのきょくについてはなしてなかったな」


 キース、ルイ、フジコの三匹さんびきたのしそうにわらう。


「たしかに。でも、今日きょう一月いちがつ十六じゅうろくにち。タイミングはバッチリだ」


 キースの言葉ことばに、マイケルはちいさくうなずいた。


「マル。明日あした早起はやおきできるか?」


「いいよ。何時なんじ?」


おそくても五時ごじには東遊園地ひがしゆうえんちてほしい」


「ご、五時ごじぃ!?」と大声おおごえさけんだオレは、そんなにはやきられる自信じしんがなかったので、そのままシンディと東遊園地ひがしゆうえんちかったのだ。



 早朝そうちょうだというのに、公園こうえんには続々ぞくぞくひとしかけてくる。


「なんでこんなにひとがいるの?」


 シンディはちかくの時計とけいけた。


わたしたちが『満月まんげつゆうべ』を大切たいせつにするのとおな理由りゆうよ。マルのりたいこたえと一緒いっしょ」とつぶやいて、シンディはゆっくりとかたした。


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