「イノシシの目撃情報(10月1日・神戸水上)」。スマートフォンに届く大量のメールの中に、こんなタイトルが紛れ込んでいた。「神戸水上」とは兵庫県警の警察署の一つ「神戸水上署」。文字通り神戸市の神戸港周辺の海域と、陸地では人工島のポートアイランドを含む神戸市中央区の沿岸部を管轄する警察署である。水上署管内でイノシシ? 何かの間違いではないか。戸惑いをあざ笑うかのように、メールはその後も続いた。「10月21日・神戸水上」「10月24日・神戸水上」-。気がつけば、足は自然とミナト方面に向かっていた。(井上太郎)
■こつぜんと現る
発見された場所は海上輸送に使う倉庫が広がる港、神戸市中央区小野浜町周辺だ。一帯に山はない。
くだんのメールは、兵庫県警が配信する「ひょうご防犯ネット」。誰でも無料で登録でき、不審者の目撃やひったくりなどの街頭犯罪の発生だけでなく、警察が認知したクマやイノシシといった野生動物の出没情報も確認できる。
過去の配信を整理してみると、神戸市中央区を管轄する生田▽葺合▽神戸水上-の3署のうち、山側に当たる生田、葺合両署の管内では昨年1~12月にイノシシの目撃情報が39件。それに対し、海側の国道2号線以南を受け持つ神戸水上署管内はたったの6件。もっと言えば、9月29日まではゼロで、9月30日に国道2号より南の「みなとのもり公園」付近にこつぜんと現れている。
残り文字数 5705 文字 記事全文 6282 文字