深ヨミ

(9)<番外編> 里で感じたツキノワグマの「視線」

2022/12/10 05:30

 10月下旬、兵庫県養父市内の集落に置いたセンサーカメラの画像を見て、私たち取材班は驚いた。設置から回収までの1週間に記録された映像には、何頭ものツキノワグマが日替わりで映っていた。この時、集落への出没はピークを迎えていた。舗装路の真ん中、どっしり構えてこちらを見つめる黒い巨体。別の映像には親子の姿もあった。1990年代には絶滅が危惧されたが、近年は生息数が回復してきた兵庫県のツキノワグマ。今秋、人里に接近する姿を追いかける中、特に私たち取材班の印象に残ったのがクマが集落に出没する「侵入口」だった。クマに限らず多くの野生動物がぞろぞろと現れるこのスポットはまるで異界につながる扉のよう。私たちがこの場所と出会った経緯、そして関係する人々から教わったことを書き記したい。



■わずか5秒の後ろ姿


 残り文字数 4520  文字 記事全文 4866  文字

特集記事一覧
PC SP