岡本商店街の名店探し(3)ホテル仕込み、一杯に真心 ダイニングバー「月の家」
2019/02/19 14:28
神戸新聞NEXT
人は岡本(神戸市東灘区)を石畳のまちと呼ぶ。どのくらい石畳が敷き詰められているのか? 調べてみると…。桜御影石でできた厚さ10センチの石畳が何と7550平方メートルにわたって広がっていた。岡本坂、ゲート坂、キャンパス通り、フェスティバル通りの4本の目抜き通りを中心に、281店が軒を連ねる岡本商店街。その加盟店数が「市内最多」と聞いて、これまた驚いた。普通に歩いてもおもしろくない。目抜き通りから奥まった路地や目立ちにくいビルの上階、地下の名店を見つけてみよう。名付けて「岡本めぐりウエ・シタ・ヨコ」。同商店街のアイドル「石だたみボーイズ」のメンバー8人のナビゲートで、個性豊かな店主たちに話を聞いた。
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阪急岡本、JR摂津本山駅から徒歩3分。通行人が行き交う山手幹線から、ひっそりと地下へ階段が伸びる。靴音を響かせながら降りると、そこには大人の雰囲気漂うシックで洗練された空間が広がっていた。
「最大の“売り”は細やかな気配りです」。オーナーの巖本祐介さん(48)が力を込める。
たつの市出身。西播地域の有名進学校を卒業したが、大学には進まずバーテンダーの道へ。「勉強ができなかった分、ほかのことで同級生を追い越したかった」と振り返る。
1991年からは、神戸ベイシェラトンホテルに勤務し、全国のホテルバーテンダーが技術を競う大会で優勝を果たすなど腕を磨いた。「お客さんから“すみません”と呼ばれたら負けと思っている。一流はその前に気付かなければいけない」とこだわりを口にする。
2006年、知人を介して知り合った先代のオーナーから月の家を引き継いだ。インテリアデザイナーの森田恭通氏が設計した店のデザインが経営方針と合致。「岡本という場所が、これまで培ってきた技術と合っていたのも決め手になった」。
「ソムリエが選ぶこだわりのワインを旬な料理と」をコンセプトに、丹波産猪肉のボタン鍋や高知産のキジ鍋、根室産蝦夷鹿のすき焼きといったジビエ鍋も考案する。「1軒目から行けるバーを目指したかった」と話す。
近年は客が高齢化。若い客層もターゲットに、「インスタ映え」を狙った商品を売り出すなど試行錯誤を続ける。
「若者がバーに来なくなっている厳しい時代。それでも原点であるサービス精神を大切にしていきたい」
ジャズが流れる空間で、今日も一杯に真心を込める。(西竹唯太朗)