フィギュアスケート・村元哉中「あの緊張感をもっと」高橋大輔と五輪目指す

2019/02/15 15:16

フィギュアスケート・アイスダンスで新たなカップルを結成した村元哉中(左)と高橋大輔=コーセー新横浜スケートセンター

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 2018年平昌(ピョンチャン)冬季五輪のフィギュアスケート・アイスダンス代表、村元哉中(かな)=神戸市東灘区出身=の〝第2章〟が幕を開けた。バンクーバー五輪男子銅メダリストの高橋大輔と新たなカップルを結成し、22年の北京五輪を目指す。平昌五輪後、一度は現役引退も覚悟したという村元。日本フィギュア界のスターと手を携え、再び銀盤に向かう。

 世間を驚かせた高橋のアイスダンス転向は、村元の意を決したオファーが始まりだった。

 18年夏、ともに五輪に出場したクリス・リード(故人)とコンビを解消後、ダンス留学などをしながらパートナーを探したが、うまくいかなかった。「大ちゃん(高橋)がアイスダンスに興味があるのは聞いていた」。19年1月、大阪のホテルのカフェで会い、「スケーターとして魅力的。ダンスに向いていると思う」と声を掛けた。答えは「考えてみる」だったという。
 現役復帰していた高橋はシングルの練習に集中していたが、自身が主演を務めるアイスショー「氷艶」の演者に村元が選ばれたことが、前に進むきっかけとなる。
 同7月、ショーの新潟合宿で朝6時から極秘に練習。「ダンス用の靴とエッジも用意してくれていた。あとは『この1時間が勝負』だと」(村元)。手をつないで一緒に滑る。並んで曲線を描く。村元は驚いたという。「2人ともシングルを経験しているからか、カーブの描き方が似ていた。それに私が大ちゃんに追い付けないほどスピード感がすごかった」
 高橋の感想は「難しいけどすごく楽しい」と前向きだった。数日後、近くの浜辺で話し、晴れてペア結成が決まった。断られたら「引退も覚悟していた」という村元は「本当に良かった」と心から安堵(あんど)した。

 村元は5歳のとき、神戸市内のリンクでスケートを始め、姉の小月(さつき)さんと刺激し合いながら力を伸ばした。14年にアイスダンスに転向すると、2大会連続で五輪に出場していたリードとのカップルで全日本選手権を15年から3連覇。18年2月に初めて出場した平昌五輪は15位、3月の世界選手権は11位と、それぞれ日本勢過去最高の成績を残した。
 フィギュアファンに「かなクリ」と愛された名コンビはわずか3シーズンで終わりを告げ、リンクに上がれない日々が続いた。それでも、「五輪や世界選手権のリンク脇で感じた、あの緊張感をもっと味わいたい。そして、アイスダンスを多くの人に見てほしい」。そう思い続けた日々が、運命の糸を結び付けた。

 20年2月、米フロリダ州を拠点に2人の挑戦がスタートした。周囲の期待をよそに、村元は足元を見つめる。「五輪への意気込みをはっきりと言える段階ではない。まずはとにかく練習。12月の全日本選手権でいい演技をしたい」
 すべてを2人で一からつくり上げる難しさは覚悟の上。村元を突き動かすのは「ダンスの競技者としてもう一度復活したい」との思いだ。高橋の人気や影響力もあらためて実感しつつ、可能性を感じている。「シングルとは違ったストーリー性など、ダンスの魅力をたくさんの人に知ってもらえる。新しい世界を一緒に応援してもらえればうれしい」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で練習リンクが閉鎖されるなど道のりは順風満帆ではないが、2人なら乗り越えられる。もう一度、満開の花を咲かせてみせる。(山本哲志)

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