「いつか両手挙げ喜べるように」男子400Мリレー、絆に触れた夜更け
2021/08/08 05:30
バトンが渡らず途中棄権となり引き揚げる(左から)小池祐貴、桐生祥秀、多田修平、山県亮太=6日、国立競技場(撮影・高部洋祐)
トレードマークの笑顔は消えた。6日午後11時半ごろ。東京五輪陸上男子400メートルリレーの決勝を終えた多田修平(住友電工、関学大出身)が、報道陣の前に現れた。
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天を仰いだ。
「つながらなかったのは…。僕の実力不足だなと思います」
日本は、第1走者の多田から山県亮太(セイコー)へのバトンが渡らず、途中棄権した。原因について「正直、まだ分からないです。申し訳ない気持ちでいっぱいです」。声を絞りだした。
かばうようにまくしたてたのは、同じ住友電工所属のアンカー小池祐貴だった。「飛び出た瞬間にもう速いなと。多田の走り、めっちゃキレがあって、いい走りしてるって」。インタビューを終えて体育座りでうつむく多田に、視線を送った。
小池は熱っぽく続けた。「この悔しさを忘れないで、みんなでこの気持ちをずっと引きずって、いつかフィニッシュした時に、みんなで両手を挙げて喜べるようになれれば…」。目を潤ませた。
失敗の責任を背負い込もうとする仲間を、放っておけなかった小池の気概。メンバーの絆に心を揺さぶられた夜更けだった。(藤村有希子)