兵庫県立大政策科学研究所長 草薙真一教授
合成メタン、化石燃料代替に
脱炭素社会の実現に向け、化石燃料の代替となるエネルギー源の開発が進められている。水素の研究などに取り組む兵庫県立大は今春、政策科学研究所を拠点に、具体的な政策提言をしていく体制を整えた。その取り組みや燃料の脱炭素化について、同研究所所長の草薙真一教授(56)=エネルギー法=に聞いた。(聞き手・石沢菜々子、撮影・長嶺麻子)

日本のエネルギーに関する政策や地域課題について語る草薙真一教授=神戸市西区学園西町8、県立大政策科学研究所(撮影・長嶺麻子)
-どんな取り組みを。
「姫路にある本学の水素エネルギー共同研究センターとともに、学内の文系、理系の知識を融合させています。市民向けには、先端技術を学ぶ社会見学会やシンポジウムを企画しています」
-文理融合の考え方とは。
「例えば、アンモニアの使い方。文系は『二酸化炭素(CO2)を出さないから、どんどん活用を』と考えがちですが、理系は劇物を取り扱う観点で考えます。飛び散ると人体にも有害なので、飛行機や自動車の燃料では使えない。そうした場面も踏まえ、CO2と水素で(天然ガスの主成分である)メタンを合成する『メタネーション』を進めていくべきでは、という政策策定の議論にもなっていきます」
-メタネーションについて教えてください。
「工場などから回収したCO2を使うので、発電時にCO2が出ても実質的にゼロになるという考え方です。東京ガスなど4社が国内で使う合成メタンの製造拠点を米国に設けるほか、液化天然ガス(LNG)から都市ガスをつくる過程で水素を取り出し、メタンを製造するなどの研究開発が国内各地で進んでいます」
「技術やコスト面での課題はありますが、国策としては2030年までの合成メタンの導入を目指しています。最終的には、使用する水素も、製造過程でCO2を出さない『グリーン水素』にしていく必要があります」

日本のエネルギーに関する政策や地域課題について語る草薙真一教授=神戸市西区学園西町8、県立大政策科学研究所(撮影・長嶺麻子)
-兵庫での可能性をどう見ますか。
「姫路港には関西電力のLNG輸入基地があり、液体水素輸入基地の建設も検討されています。周辺企業が蓄積した金属加工のノウハウも活用し、天然ガスの代わりに合成メタンを、都市ガス導管が届くエリアに行き渡らせたいものです」
【くさなぎ・しんいち】1966年、愛媛県出身。慶応義塾大学博士(法学)。2008年から兵庫県立大教授、22年4月、政策科学研究所所長兼務。