阪神・淡路大震災 亡き祖父への思い募る 家業継いだ男性

2013/01/17 23:56

「店には今も祖父の思いが生きている」と話す裏井洋平さん=淡路市浅野南

 阪神・淡路大震災から19年目の被災地に終日、ろうそくの灯がともる。歳月がたっても変わらない後悔がある、涙がある。もうすぐ発生から2年を迎える東日本大震災の被災地も、思いは同じだ。亡き人の心を抱きながら、きょうをあしたを、踏みしめるように生きる。また一歩、ともに踏み出していこうと思う。 関連ニュース 長田の「シューズプラザ」 神戸の住宅会社に売却 神戸で全日本広告連盟大会 京都や新潟の取り組み表彰 阪神・淡路大震災劇、再演始まる 石田純一さんも


 淡路市富島の裏井洋平さん(30)は、震災で亡くなった祖父の裏井美昭(よしあき)さん=当時(66)=が守ってきた衣料品店を両親とともに切り盛りする。5年前、故郷に戻って商売を手伝うようになり、それまで知らなかった祖父の姿を知った。17日夕、祖母とみ子さん(81)と一緒に近くの寺で営まれた法要に出席。「もっと話したかった」「仕事を教わりたかった」-。18年たって思いは募る。
 美昭さんは全壊した木造3階建ての店舗兼自宅の2階で、はりの下敷きになった。「痛いよ」と言う声を横で寝ていたとみ子さんが聞いたが、家から出された時には亡くなっていた。
 店は洋平さんの曽祖父が行商から始めた。美昭さんの代に服や化粧品などを扱う店として規模を拡大、従業員を4~5人雇った。
 震災後、店が全壊したにもかかわらず、ほかの店では使えない商品券が売れた。地元の人が「裏井さんの店はすぐに開店するやろ」と買ってくれた。
 半年後、約1キロ離れた場所に約280平方メートルの店を再建した。「見やすいように値札は必ず前を向ける」「全ての人と平等に接するため、値引きはしない」。祖父の経営方針を守り続ける。
 富島のまちは、震災で家屋の約8割が全半壊し、26人が亡くなった。火が消えたように友だちや近所の人がいなくなり、洋平さんは「人と会う時間を大切にしよう。次はないかもしれない」と思うようになった。
 そして「あの人がおるから、店に行こう」と言われたい。祖父が築いた信頼をもっと大きくしたいと思う。
(敏蔭潤子)

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