がれきの下、祖母がかばってくれた 救われた命つなぎたい

2014/01/07 18:19

長男出海ちゃん(左)、次男理央ちゃんと一緒に、おなかの中の第3子に話し掛ける富田めぐみさん=西宮市西波止町

 私のせいで祖母が死んだ-。ずっとそう思っていた。阪神・淡路大震災で神戸市東灘区のアパートが倒壊。富田めぐみさん(34)=西宮市=を守るように覆(おお)いかぶさり、祖母が命を落とした。自分を責め、生きる意味さえ見失っためぐみさん。子を授かり、母になってやっと分かった。「おばあちゃんに助けられた命をつなぐために生きている」。2月には第3子の出産を予定している。(斉藤正志) 関連ニュース 阪神・岩崎投手が一日署長 年末警戒発隊式に参加 二藍の会が水彩画展 心を込めた48枚並ぶ 三田 校内外で盗撮60回 三田市立学校教諭を懲戒免職


 中学3年だった19年前、大好きな祖母石原文子(ふみこ)さん=当時(72)=と暮らしていた。1月17日、ごう音とともに天井が崩落。暗闇の中、めぐみさんの右手が祖母の頭を抱えるような形になっていた。苦しそうにしていたので右手を引き抜いた瞬間、天井がさらに崩れ、祖母は梁(はり)に挟まれて何も話さなくなった。
 「私が殺した。手を引き抜かなければ…」と責め続けた。祖母のことを考えると右手の震えが止まらない。何をしても心から笑えない。「死ねばおばあちゃんに会えるかな…」と考えたこともあった。
 転機は2007年8月26日、長男の出海(いずみ)ちゃんが生まれたことだった。しわくちゃの赤子を抱き、「絶対に私が守る」と誓った。
 寝返りするようになり、はいはいするようになる。できることが増えるたび、いとおしさが募った。いつの間にか、右手の震えはなくなっていた。10年3月15日には次男の理央(りお)ちゃんも誕生した。
 昨春、5歳の出海ちゃんがこう話してくれた。「ママ、おばあちゃんが死んだ時、いっぱい泣いてんね。僕がお空にいる時、神様に『ママのところに行かせて』ってお願いしてん。ママがいっぱい笑えるようにって」。めぐみさんは、出海ちゃんを思い切り抱き締めた。
 第3子が、おなかの中で蹴る。「きょうは元気だね」「かわいいね」。長男や次男と一緒に毎日のように話し掛ける。
 「おばあちゃんのためにも私が幸せになろうと思えるようになった。子どもは、おばあちゃんみたいに明るくて優しくて、勇気のある子になってほしい」。めぐみさんは大きくなったおなかをなでて、ほほ笑んだ。

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