転機 それから
伝統の蔵 再建の日まで

井上健一郎さん(43) 美穂子さん (39)
大黒正宗醸造担当者/神戸市東灘区

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転機 それから
伝統の蔵 再建の日まで

井上健一郎さん(43) 美穂子さん (39)
大黒正宗醸造担当者/神戸市東灘区

 阪神・淡路大震災で灘の蔵元は大打撃を受け、中小の酒造会社がいくつもなくなりました。創業260年のウチも生産を100分の1に減らし、生き残りを模索してきました。
 でも昨年10月、唯一残っていた蔵が、設備を更新できず取り壊しになりました。それからの大黒正宗は、白鶴酒造さんの蔵を借りて造っています。現場で酒造りに携わるのは私と妻の2人だけ。大黒の味、技を残す使命を託された形です。
 入社は震災翌年の1996年です。震災当時は学生で、神戸にあった下宿が全壊し、避難所を転々としました。蔵を初めて見学したのは95年の夏。設備は傷んでいましたが、大学と大学院を通じて6年を過ごした神戸で就職したかったんです。
 昨年末、白鶴の皆さんの協力を得てできた新酒は、大黒らしさはそのままに、いっそう洗練された素晴らしいものになりました。
 会社には現場を離れ、営業や販売で汗を流す仲間がいます。自社の蔵を取り戻したいというみんなの期待はひしひしと感じていますし、自立することが手をさしのべてくれた白鶴さんへの最大の恩返しになると思っています。(山崎 竜)


2014年7月17日掲載
写真撮影場所:

神戸市東灘区住吉南町4、白鶴酒造