あの日の記憶 傍らに
最期の場所 伝える石碑

田中保三さん (73)
自動車部品販売会社会長/神戸市須磨区

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あの日の記憶 傍らに
最期の場所 伝える石碑

田中保三さん (73)
自動車部品販売会社会長/神戸市須磨区

 この御影石の碑は、震災前の長田・御菅(みすが)地区の地図です。真上にある高さ約2メートルの天板の穴に差し込む光が、いくつも碑面に映る仕組みです。それらは、この地で亡くなった127人の、最期の場所なんです。
 区画整理で町の姿が変わっても、多くの命が失われた災害の記憶をとどめたい。そんな住民の思いが一つになり、2001年に慰霊碑は建ちました。みんなで費用を工面し、工事にも加わりました。
 私はここで、父の代から続く自動車部品販売会社をやっています。震災で社屋や倉庫が焼け、商品も現金も燃えてしまった。
 失って気づいたのは、いかに自分の利益しか頭になかったかということ。そして、苦しい時に応援してくれる人のありがたさでした。これからは誰かの力になれる人間でありたいと、ボランティア活動に関わるようになりました。
 全国から震災学習の受け入れも続けています。「亡くなった人にとって、明日は希望に満ちた日だったはず」。慰霊碑を案内しながら、子どもたちにそう語りかけます。「だから、今を生きる私たちは、命を大事にせなあかん」と。
(三浦拓也)


2014年10月22日掲載
写真撮影場所:

神戸市長田区御蔵通5、御蔵北公園