手作りの誇り 失わず
何でも作れる技がある

興津博捷さん (72)
瓦製造会社社長/淡路市

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手作りの誇り 失わず
何でも作れる技がある

興津博捷さん (72)
瓦製造会社社長/淡路市

 震災でわしらは二重の苦しみを味わった。
 あの揺れで、会社の瓦という瓦がむちゃくちゃになって、1千万円ほどの被害が出た。そのうえ、瓦が重すぎて家がつぶれた、と風評が広まったんや。
 耐震実験で瓦の重さが倒壊に影響しないことを証明したり、爪や突起物をつけて屋根から落ちにくくした「防災瓦」を開発したりした。でも、洋風住宅が増えて需要が減り、淡路島の瓦業者がたくさん倒産した。うちの生産量も震災前と比べたら7割ほど減った。
 逆風の中でわしらの支えになったんは、こだわってきた手作りの技やった。昭和50年ごろから「鬼師」と呼ばれる鬼瓦を作る職人を育ててきた。古い鬼瓦を全国から取り寄せて復元し、若い職人が技術を磨いた。だから何でも作れる。今の時代に合わせて、8年ほど前から瓦を使ったインテリアやエクステリアの製造を始めた。
 燃料代の高騰もあるし、瓦の軽量化も限界があるから、これからも新しい物作りに挑戦したい。問題はたくさんあるけど、400年の歴史がある淡路瓦の伝統は絶やさへんよ。
(辰巳直之)


2014年11月19日掲載
写真撮影場所:

南あわじ市津井、瓦製造会社「タツミ」