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「住民主体」にこだわった

野崎隆一さん (71)
建築家/神戸市東灘区

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「住民主体」にこだわった

野崎隆一さん (71)
建築家/神戸市東灘区

 震災の約1週間後、何でもいいから週末にボランティアをしたいと、神戸市の東灘区役所に行ったんです。
 そしたら「1級建築士さんなら、いくらでもやってもらえることありますよ」って言われて。勤め先の会社ではただの資格にすぎなかったのに、人の役に立てて、うれしかった。
 2千人が避難していた魚崎小学校にいた友人から「避難者の住宅相談に乗ってほしい」と頼まれてね。毎週末、関西の仲間と建築診断をして回った。「建築家が言うなら安心や」と、家に戻られる人が相次ぎました。
 住宅の共同再建やマンションの再建に関わり、一番こだわったのが「住民主体」です。合意形成とは民主主義そのもの。個人がいかに共通の基盤を持てるか。その鍵となるのが情報です。行政は伝えたというが、一人一人のことは考えていない。誰かがカバーしないと、行き違いが起きる。一人一人の話に耳を傾けることが大切です。
 一人でできることには限界があります。普段から仲間をつくり、チームとして動く。専門知識や経験を出し合い、それを調整する人が必要です。昔も今も、そういう動き方が自分には一番合っているなと思うんです。
(聞き手・長沼隆之、写真・三浦拓也)


2015年1月 6日掲載
写真撮影場所:

神戸市中央区中山手通2