ダウン症の娘育てる母親が絵本 着想は、のし袋に感じた「不思議な縁」

2021/12/12 05:30

絵本を出版した片岡加奈子さん(右)と次女の來紀さん。挿絵に使う小物やクッキーを作った濱田宏美さん(左)=津名図書館

 ダウン症児にある3本の21番染色体。そこから着想した絵本「あわじ結びはしあわせ結び」を昨年出版し、作家として歩み始めた片岡加奈子さん(50)=兵庫県淡路市。「障害のある子どもを育てる親は、言いたいことを我慢してしまうことが多い。堂々と前に出てこられるよう、力になりたい」と話す。(内田世紀) 関連ニュース がんで急逝の教諭がつづった絵本 元教え子らに読み聞かせ 障害ある次男に学んだ「命ほど重いものはない」 稲川淳二さん 息子3人発達障害、パワフル母ちゃんが子育て奮闘記


 2012年、次女の來紀(らき)さん(9)を出産した。「自殺サイトを見て回った」というほど思い悩んだが、「優しい言葉や厳しい言葉、さまざまな言葉に救われ、しっかり育てようと決心した」という。
 ある時、祝い事に使われる熨斗(のし)袋の水引が目に留まった。三つの丸が重なった形に「ダウン症の染色体みたい」。調べると、「淡路結び」と呼ばれる結び方だった。「ぞくっとするほど、不思議な縁を感じた」
 14年から「淡路市ふるさと講師」などとして、子育てを通じて学んだ命の大切さを伝える講演活動に取り組んだ。毛糸で作った淡路結びを「ラッキーアイテム」として配った。障害者と健常者が共に学ぶ「インクルーシブ(分け隔てなく包み込む)教育」の啓発に力を入れた。
 19年、メッセージを絵本で伝えようと、創作を始めた。物語には3人の天使が登場し、赤い毛糸の淡路結びをさまざまな形に変えていく。
 「イチゴは一期一会。ご縁を大切に」「テントウムシは前へ進む」-。來紀さんの1本多い染色体に、「忘れかけていた大切なことが詰まっている」との思いを込め、温かい文章でつづった。
 挿絵には、物語に合わせて手作りした小物や絵入りのクッキーの写真を使った。同県洲本市でアイシングクッキー教室を開く濱田宏美さんが手掛けた。天使たちが暮らす家、リンゴの木など、柔らかな色彩のクッキーが見る人の心を和ませる。
 東京の出版社から200部発行し、すでに完売した。淡路市立津名図書館が1冊所蔵し、貸し出している。27日まで、片岡さんの活動を紹介する写真展が同図書館で開かれている。

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