昨年8月にがんで亡くなった谷八木小学校(兵庫県明石市大久保町谷八木)の元教諭、高橋祐子さん=享年(40)=が文をつづった絵本「あまびえさんのおはなし」の読み聞かせが9日、同校体育館であった。コロナ禍に悩む人びとの気持ちを前向きにさせる妖怪の物語に、4~6年生約250人が聞き入った。「困っている人を助ける話なのか。高橋先生らしいな」。児童の一人は涙を拭いながら笑顔で語った。(長尾亮太)
高橋さんは昨年2月に病気が発覚。スキルス胃がんで既に進行していた。手術のために学校を休む中、市民グループ「Casaそら」(同市大久保町西脇)代表の中野愛子さん(48)と出会い、中野さんが構想していた絵本の文章を担った。集中して数日で書き上げたという。
高橋さんの葬儀で絵本を上演したところ、参列していた同僚教員らが「子どもたちにも聞いてもらいたい」との思いを抱き、同校から上演依頼が届いた。
この日の読み聞かせでは、同グループの活動を通じて高橋さんとは知り合いだった通照院(神戸市垂水区)の僧侶、真鍋佳奈さん(40)がささやくような優しい口調で朗読。岡山県のシンガー・ソングライター岩田匡史さん(40)がギターでBGMを奏でた。
2019年度に高橋さんが担任したクラスの教え子は思いもひとしお。4年の女子児童(10)は「先生と会ってたくさん話をしたくなった。私が苦しいときは相談に乗ってくれて、答えやヒントをくれた。これからも守ってもらいたい」と声を詰まらせた。
別の4年の女子児童(10)は「優しい反面、ちゃんと叱ってくれた。恋の話題にも応じてくれて『元気だからモテるよ』って励ましてくれた」。4年の男子児童(10)は「友だちとけんかしたときに優しく仲裁してもらい、その友だちとはもっと仲良くなった。読み聞かせの最中に泣くのは我慢した。だって先生が悲しむと思ったから」と話した。