都会の水辺でおしゃべり 見とれて「かわいいなあ」、近づいた記者にはふん… 尼崎のユリカモメ

2021/12/08 16:30

羽を休めるユリカモメ。まるでおしゃべりしているよう=尼崎市昭和通2、庄下川

 渡り鳥のユリカモメが冬を越すため、阪神間の水辺に飛来している。寒くなるとロシア方面から日本へやってくる小型のカモメだ。 関連ニュース 昨年も→【写真】オシドリ麗しく、仲むつまじく 神戸・布引貯水池で羽休め 愛らし越冬ユリカモメ 神戸港、冬の波止場にぎわい ソリハシセイタカシギ、兵庫県で初確認 ネットで広まり愛好家ら殺到

 兵庫県尼崎市を流れる庄下川、玉江橋の周辺では、柵の手すりや街灯にざっと100羽超が羽を休めている。地元住民によると、毎年この時期に群れが姿を見せる。
 妙に人に慣れていて、1メートルくらい手前まで近づいても逃げない。さらに踏み出すと、めんどくさそうに羽を広げて別の手すりに飛び移った。ときどき川にふんを落とし、水面が白くにじむとコイが集まってくる。
 川をまたぐパイプの上は特に居心地がいいようで、等間隔に並んでいる。その行列の中に、1羽だけウが交ざっていた。倍くらい大柄で真っ黒な姿は周りから浮いているが、まるで群れの一員であるかのような顔をしている。ユリカモメたちも、特に警戒するそぶりはない。
 写真を撮っていると突然、全てのユリカモメが一斉に飛び立った。レンズを向けて、夢中でシャッターを切る。群れはしばらく上空で旋回し、元いた場所に戻ってきたら、いつのまにかズボンと手にふんが落ちていた。
 白い冬羽をまといながら、くちばしや脚だけ鮮やかに赤いのがかわいらしい。ただ、夏羽に衣替えすると一転して顔が黒くなり、覆面をかぶった泥棒のようになる。さらにその鳴き声はギィーギィー、ギャーギャーと案外しゃがれている。
 川に架かる線路を阪神電車が行き交っても、近くの消防署からサイレンが聞こえても、平然と毛繕いをして、騒々しい都会の冬に溶け込んでいる。通りがかった男性は足を止め、柵にもたれかかって「かわいいなあ」と見とれていた。(大田将之)

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