<リカイってなに?>性告白の先に(4)同性愛者の弁護士・南和行さん

2022/01/21 05:30

南和行弁護士

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 兵庫県尼崎市保健所に勤めていた性的少数者の30代男性が、上司から「公務中のカミングアウトは控えるべき」と指導され、組織に失望して依願退職した。性的指向によって差別されない社会はどうすれば実現できるのか。同性愛者である南和行弁護士はインタビューで「性のタブー視をやめなくてはいけない」と語った。(聞き手・山岸洋介)
     ◆
 -尼崎市保健所の男性職員が性的指向のカミングアウトを巡って退職した問題は大きな反響があった。
 「もしかすると多くの人が、本音では『文句を言わず働き続けたらよかったのに』と元職員に非があると思っているかもしれない。性的少数者は権利を主張せず我慢するのが当然だ、と」
 「多様性の尊重について、私たちの社会は『いいことですね』と口では言うけど、実際にはあまり見たくないというのが本音ではないか。元職員は、そういう矛盾を一身に背負って辞めていったのではないか」
 -尼崎市長は幹部の対応を検証するという。
 「これが性の問題ではなく、国籍や出身地の差別で退職に追い込まれたケースならどうだったか。市民にしつこく出自を尋ねられた職員がやむなく答え、それについて当の市民から『戸惑わされた』と苦情が寄せられたとする。それで幹部が『適当にごまかせばよかったのに』と、被害者である職員を責めたら、もっと大問題になるだろう」
 -性の問題だから社会の受け止め方が違うのか。
 「性的指向を話題にするのはハードルが高く、当事者も含めてみんな及び腰になる。それは日本人が性について、立ち止まって考える機会が少ないからではないか。性に対して気恥ずかしさを持ったまま大人になる。性をふしだらで隠すべき対象として扱ってきた」
 「だから『自分は男だけど、女性は恋愛対象ではない』という話をされると、いきなり自分の内面にある気恥ずかしさに直面させられて動転する。性教育も『生理の貧困』も深刻でまっとうなテーマなのに、議論がはばかられる雰囲気があるように感じる。性的指向をオープンに語り合える社会のためには、性のタブー視をなくさないといけない」(聞き手・山岸洋介)
=終わり=
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