きっかけ父の労災 防災士の大学生、住民と取り組むまちづくり「災害時助け合える地域に」 三木
2022/09/01 05:30
さまざまな防災知識を伝える関西国際大学の藤本幸音さん=三木市宿原
関西国際大学経営学部3年の藤本幸音(ゆきね)さん(21)が、地域の防災力を高めようと、兵庫県の三木市内で活動を続けている。高校2年生の時、労働災害で父親を失い、危機管理を学ぶために同大学に進学。「労災だけじゃなく、もっと広い意味で人の命を助けたい」と、地域住民と歩いて危険箇所を伝え、防災グッズの作り方を指南している。(長沢伸一)
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藤本さんは学内の防災サークルに所属し、防災士の資格を持つ。三木市から「避難所運営サポーター」の委嘱も受けている。学んだ知識を地域に還元したいと、防災を考えるイベントの開催を東紫美ケ丘地区の自治会長に直接依頼。プランは全て藤本さんが考案し、4月の初回は、住民と一緒に地域内の危険箇所などを巡った。
2回目は8月27日に東紫美ケ丘公民館で実施。住民8人が参加した。今回は住民から「土砂災害対策を知りたい」との要望を受け、市危機管理課に講師を依頼。同課の山本隆之課長らが、ハザードマップなどを用いて災害発生時の避難方法などを解説した。
藤本さんは新聞紙や広告チラシを使った座布団の作り方を紹介。2018年に北播磨地域を襲った大雨被害の際、近くの高校に避難した経験を語った。「布団や毛布がないので体を痛めた。工作をすることで気分が楽になり、知らない人とも会話を広げられる。知っておくだけで強みになる」と呼びかけた。
サークルの仲間と製作した「防災すごろく」も披露。「津波警報の発令により高台に走る。3マスすすむ」「非常食を食べてみた。経験値アップで1マスすすむ」など地域住民らは楽しみながら防災意識を高めた。
大学卒業後は、行政職員として防災に携わる仕事を志望する藤本さん。「阪神・淡路大震災など広範囲での災害時には、公助の手が回らない時もある。地域の集まりが減っている中、災害時に助け合えるまちにしたい」と力を込める。