神戸市保健所ルポ(番外編)「毎日命の選択を行っている」局長の言葉に思わず震えた

2021/04/30 06:00

1人ずつ作るコロナ患者のファイル番号は1万番を超えた=27日午後、神戸市役所(撮影・吉田敦史)

 新型コロナウイルスの感染「第4波」で病床が逼迫(ひっぱく)する中、神戸市保健所で入院調整に追われる現場に密着した。 関連ニュース 【動画】「無情な死」…10人が同時に人工呼吸管理 コロナ重症病棟の今 仮眠挟み24時間以上働く医師たち、心身すり減らす攻防 コロナ重症病棟の今 病院職員の目が語る「見せ物じゃない」 コロナ重症病棟の奮闘に25時間密着

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 「何人亡くなられてもおかしくない状況だ。その中で一番命が危ない方の入院を優先させている。毎日命の選択を行っている」
 4月21日、自宅療養中の40代男性が死亡したことを発表した際、神戸市健康局の花田裕之局長は現状をこんな言葉で説明した。
 「病床逼迫」「医療崩壊」「ステージ4」-。行政関係者らが危機感を伝えようとするさまざまな表現を耳にしてきたが、ここまでむき出しの言葉を聞いたのは初めて。思わず震えた。
 神戸市保健所では18時間以上、10席並んだ入院調整のラインを見詰め続けた。
 レストランなら「予約はいっぱいです」で済む。電話にさえ出ないかもしれない。でもここの役割は、命を救えるかどうかを左右する調整をすること。どんなにコロナ患者用の病床が埋まっていても、一人一人変わりゆく病状を追い、優先順位をつける。
 入院患者から退院基準に達したと思われる人を探したり、比較的病状が軽い人を他病院に動かせないか検討したりし、病床を掘り起こすのも重要な仕事だ。
 しかし、病床は圧倒的に足りない。保健師が「(病床が)ないんです」と電話で話すのを何度も見た。無理な希望をかなえようと、保健所も病院も必死だが、入院待ちの人は思考停止になりそうなほど多い。
 年齢や病状によって命をランク付けする。日ごろお年寄りの健康づくりや現役世代の生活習慣病予防に取り組む保健師がそれを担う。どれほど心を痛めているだろう。
 各区の保健師は、自宅で不安を抱えながら入院を待つ患者に病状を聞き取る。入院させてあげたいという一心で調整ラインに情報を伝えているに違いない。
 昨年末、神戸市立医療センター中央市民病院(同市中央区)の臨時病棟に密着取材した。その頃より状況は悪化した。医師や看護師と違い、調整担当の保健師らは防護服こそ着ていないが、最前線で闘っている。(霍見真一郎)
神戸市保健所ルポ(1)コロナ第4波で病床ひっ迫 入院調整の現場に密着
神戸市保健所ルポ(2)患者の選別、すり減る心 保健所は災害対策本部のようだった
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