逆転敗訴に怒り「夫の作業分かってない」 中皮腫で死亡の市職員、公務災害認められず

2022/03/17 23:49

判決後に島谷和則さんの妻弘美さんのコメントを読み上げる島谷さんの元同僚で明石市議の吉田秀夫さん(左から3人目)=大阪市北区

 「粉じんまみれになった作業を否定する判決だ」。阪神・淡路大震災後のアスベスト(石綿)を含むがれき処理を巡り、亡くなった兵庫県明石市職員の公務災害を一転、否定した17日の大阪高裁控訴審判決。逆転敗訴に、男性職員の元同僚や弁護士は、震災時の公務に対する不当な評価だと憤った。 関連ニュース 【写真】アスベスト、なぜ恐ろしい? 阪神・淡路大震災で被災地に飛散 震災でがれき処理、中皮腫で死亡の市職員 公務災害認めず 高裁が一審判決取り消し 「船上では石綿が雪のように」肺がんの男性3人が勤務先提訴


 判決後、亡くなった島谷和則さんの妻で、原告の弘美さん(58)が出したコメントにも怒りがにじんだ。「夫の作業内容を全く理解してもらっていない」「到底納得がいかない」。弁護団は上告する考えだ。
 島谷さんと同じく、震災でがれき処理に当たった元明石市職員ら同僚も傍聴席で判決を見守った。大阪市内での会見では自分たちの仕事も否定されたと無念さを隠さず、並んだ弁護士は「全国で災害復旧に当たる人の安全が害されかねず、判決は許しがたい」と批判した。
 控訴審判決は、がれき収集が悪性腹膜中皮腫を発症させる相当量の石綿粉じんを吸引したとは認めがたいとしたが、弁護団の位田浩弁護士は「震災でのがれき収集は中皮腫にかかる危険が常にあり、万全の対策を講じなければならない」と指摘。「少しの暴露であれば大丈夫という話になれば、対策がおろそかになってしまう」などと述べた。
 発症に相当する量の粉じん暴露を立証する難しさに、位田弁護士は「現場の空気中に粉じんが何%含まれているというデータがあるわけがない」とやりきれなさをあらわにした。(長尾亮太)

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