神戸港石綿禍、勤務先の責任認める 肺がんの男性3人に「マスク支給や安全教育せず」 地裁判決

2022/03/31 19:40

神戸地裁=神戸市中央区橘通2

 兵庫県の神戸港で貨物数を確認する検数作業で吸引したアスベスト(石綿)で肺がんを発症したとして、男性3人が勤務先の一般社団法人全日検(東京)に損害賠償を求めた訴訟の判決が31日、神戸地裁であった。斎藤聡裁判長は全日検の安全配慮義務違反を認め、慰謝料など計約6500万円の支払いを命じた。 関連ニュース 「船上では石綿が雪のように」肺がんの男性3人が勤務先提訴 大震災被災地活動1カ月で石綿禍認定 目安から極めて短く 1・17震災時、大気中の石綿「高濃度」 95年2月に神戸調査の専門家

 3人は赤木正夫さん(85)=神戸市中央区、倉渕博之さん(80)=同市灘区、田中恵さん(73)=兵庫県西宮市=で、神戸港で約40年勤務。2011~17年に肺がんが判明し、神戸東労働基準監督署から労災認定された。
 訴訟では石綿吸引の有無などが争点となった。斎藤裁判長は、神戸港で当時相当量の石綿が入った麻袋が扱われ、作業などで一定数が破損した点や、石綿が立ち込める状態で検数作業をしたことなどを認め、勤務歴を踏まえて「10年以上の期間、多量の石綿に暴露した」とした。
 さらに、1960年の旧じん肺法制定時点で危険性や予防への知見は確立していたと指摘。同年以降、防じんマスクなどを支給せず、安全教育をしなかったと全日検の責任を認めた。
 判決後、原告側弁護士は「判決という形で初めて全日検の責任が明らかとなった」と説明。倉渕さんは「3人が生きている間に確定してもらいたい」と話した。一方、全日検は「コメントできない」とした。

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