阪神・近本選手らプロ輩出、公立名門校の社が初V 創部74年、悲願にOB涙 高校野球兵庫県大会

2022/07/29 05:30

初優勝を飾り、喜びを爆発させる社高校の応援スタンド=28日午後、ほっともっとフィールド神戸(撮影・小林良多)

 延長タイブレークの激闘を制し、創部74年目の公立校が重い扉をこじ開けた。28日にほっともっとフィールド神戸(神戸市須磨区)であった全国高校野球選手権兵庫大会決勝。悲願の初優勝を飾った社(加東市)は数々のプロ野球選手を輩出するなど「北播の雄」と称されながら、夏の大会は過去9度、準決勝で涙をのんできた。積年の無念を晴らしたナインに、OBたちは「歴史を塗り替えてくれた」と万感の表情を浮かべた。 関連ニュース 社が初優勝 延長14回、神戸国際大付を破る 高校野球兵庫大会 18年前と重なった緊迫感と展開 社高校甲子園へ、夏の兵庫県大会初V 延長十四回、社の福谷が両脚つる…好敵手が激励「お前は社の顔、最後まで戦えよ」


 2連覇を狙う神戸国際大付(神戸市垂水区)との一戦は、兵庫大会の決勝では史上初の延長タイブレークとなった。延長十四回に3点を勝ち越すと、スタンドはお祭り騒ぎに。ゲームセットの瞬間、野球部OB会長で長年、チームを見守ってきた竹中和彦さん(59)は「今の選手は山本(巧)監督の下、心身共に本当に強くなった。おめでとうとしか言えない」と目頭を押さえた。
 公立の強豪校として知られ、現在もプロ球界で活躍中の近本光司選手(阪神)や辰己涼介選手(楽天)がOB。2004年の選抜大会に出場し、後にロッテ入りした坪井俊樹さんや、オリックスで活躍した下山真二さんも同校から羽ばたいた。
 実力派の選手をそろえながら、夏の甲子園が遠かった。坪井投手と2年生エースの大前佑輔投手を擁し、選抜大会で4強入りした04年の夏は準決勝で敗退。当時監督を務めていた森脇忠之さん(64)=現神港学園高総監督=は「私が監督をしていた頃は、どこかベスト8やベスト4で安心していたところがあった」と振り返る。
 今年のチームは昨秋の県大会で初優勝し、夏の準決勝の壁も乗り越えた。04年の選抜大会出場時の二塁手で、現在は西脇東中学校教諭の朝井泰平さん(35)は「選手たちは重圧があったと思うが、走塁やけん制などでクレバーな強さが見えた」とたたえた。
 野球部保護者会長で自身もOBの吉田和則さん(52)は「世代を超えてつないできた思いがやっと果たされた。甲子園で校歌が聴けたら最高」と、うれし涙をぬぐった。(岩崎昂志、山本哲志)
【兵庫県立社高校】1913年(大正2)年、小野実科高等女学校として創設、22年、社高等女学校に改称。48年から現校名。普通科、生活科学科のほか、県立高唯一の体育科があり、広大な敷地に野球場や陸上競技場、トレーニングセンターなどを整備。体育科生を中心に部活動が活発で、陸上部は県内トップクラス。校内には寄宿舎「東雲(しののめ)寮」もある。生活科学科では食品開発を通じた地域交流を行うなど、特色ある教育を実践している。卒業生に歌手のトータス松本さんら。

■とても誇らしい
 プロ野球阪神・近本光司外野手の話(社高校OB。吉報を受け)「念願の夏の甲子園出場おめでとうございます。OBとして、とても誇らしく思います! 社高校らしさを十分に発揮して、チーム一丸となって頑張ってほしいです」
■甲子園で躍動を
 斎藤元彦兵庫県知事の話 「高校生らしいはつらつとしたプレーで、全国の球児あこがれの甲子園を舞台にいきいきと躍動し、兵庫から旋風を巻き起こしてくれることを期待します」

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