「事件記録は被害者が生きた証し」 「少年A」事件の遺族代理人を務めた井関勇司さん、記録管理の法整備求める
2022/11/17 05:30
資料を手元に広げ、少年事件の記録廃棄問題について答える弁護士の井関勇司さん=神戸市中央区東川崎町1(撮影・坂井萌香)
「事件記録は、被害者が生きた証し。廃棄されたことに驚きと憤りを感じている」。神戸連続児童殺傷事件の遺族代理人を務めた弁護士、井関勇司さん(80)は語気を強めた。公益社団法人「ひょうご被害者支援センター」理事長として活動し、全国の家庭裁判所で重大少年事件の記録が廃棄されていた問題に厳しい目を向ける。記録の管理に関する法整備も求めた。
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-神戸連続児童殺傷事件の全記録が廃棄されたことを知ってどう感じたか。遺族は記録に対し、どんな思いを抱いていたか。
「あの事件は戦後最大の少年事件であり、当然、永久保存されるものだと考えていた。なぜ『少年A』が事件を起こしたのか、なぜ被害者が殺されなければならなかったのか、遺族はずっと知りたかった。だが発生当時から、事件の内容もどう処分されたかも何も知らされず、マスコミ報道で間接的に知るしかなかった。遺族側には『いつか公開されるかもしれない』という期待があったが、もうかなわない。少年審判は非公開だからこそ保存が必要だった」
-2001年の少年法改正で、遺族や被害者は事件記録の一部を閲覧できるようになった。
「遺族らが記録を閲覧する道が開かれた点はよかった。ただし閲覧できるのは審判の終局から3年間に限られており、短すぎる。気持ちを一生整理できない遺族や被害者がいるのに、3年で閲覧期限を区切るのはおかしい。時間は被害者の心を安らかにするわけではない。もう少し配慮があってもいいのでは」
-少年事件記録の管理はどうあるべきか。
「日々起きる事件の量は膨大。記録文書のデジタル保存を進めるべきだが、ある程度の廃棄はやむを得ないだろう。ただ国民の財産である記録の管理を内規で定めるのはおかしい。保存のあり方は法律で定めないといけない」
「永久保存するか否かを、裁判所が単独で判断するのはよくないだろう。すべての記録について、弁護士や学識者ら第三者による諮問機関をつくり、個別に議論して決めてほしい。そこには当然、遺族や被害者の声も反映させるべきだ」
(聞き手・金 慶順、撮影・坂井萌香)
▽いせき・ゆうじ 1942年生まれ。71年から弁護士として活動。神戸連続児童殺傷事件では、次男の土師淳君=当時(11)=を殺害された父の守さんの代理人を務めた。2002年の発足当初から「ひょうご被害者支援センター」に携わる。
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