三木谷氏「光免疫療法、賭けてみる価値ある」 きっかけは父親のがん 薬剤開発に巨額支援
2021/11/20 16:30
インタビューに応じる三木谷浩史氏
がん細胞を狙い打ちする革新的な治療法「光免疫療法」の保険適用が始まって11月で1年。兵庫などで少しずつ適用例が増える中、同療法の薬剤を手掛ける楽天メディカルジャパン(東京都)会長の三木谷浩史氏(56)=神戸市出身=が神戸新聞の取材に応じ、医療事業進出の意義や今後の展望を語った。父親ががんを患い、治療法を探す中で光免疫を知ったといい、「賭けてみる価値があると感じた」と期待を寄せる。
関連ニュース
がん光免疫療法 三木谷氏インタビュー<前編>
がん光免疫療法 三木谷氏インタビュー<後編>
【動画】光免疫療法「こんなに速く効く薬はない。患者の負担も少ない」神戸大病院の丹生健一教授
光免疫療法は、米国立衛生研究所主任研究員の小林久隆氏(60)=西宮市出身=が開発。オバマ米元大統領が2012年、一般教書演説で紹介した。
抗体に特殊な物質をつけた薬剤を点滴し、翌日、薬剤ががん細胞に集まった時点で近赤外光を当てると、がん細胞が破壊される。現在は、頭頸部がんの一部が保険適用となっている。
楽天グループ会長兼社長でもある三木谷氏が光免疫に出合ったきっかけは、神戸大名誉教授だった父の故三木谷良一氏が膵臓がんと診断されたこと。世界中で治療法を探す中、13年に知人から小林氏を紹介された。
ほどなく臨床試験に向けた支援を決断。父親の治療に間に合わせるのは「膵臓がんの性質上、なかなか難しいかもしれない」と感じたが、「なぜがんを破壊できるのかという論理が『1+1=2』というのと同じぐらい明らか。実用化に多少のハードルはあるかもしれないが、人を助けられそうだな、とシンプルに考えた」と振り返る。
光免疫療法の印象については「ネットショッピングを始めたとき、誰もネットで物を買わない時代だったが、『いける』と思った感覚と似ている」といい、「天国までお金を持って行けるわけではない。もうけたお金を再利用し、たくさんの人を救えればと思った」と説明。20年9月に薬事承認され、同年11月18日に保険適用された。
世界的企業を一代で築いた三木谷氏は豪腕で知られるが、「盛田さん(ソニー創業者の故盛田昭夫氏)にしても、松下幸之助さんにしても、ビル・ゲイツにしても、使われていなかったテクノロジーや新しいことをやるためにはブルドーザーのように進めなくてはいけなかったはず」と強調。楽天メディカルについて、「まだまだ赤字だが、いろいろながんに光免疫の適用を広げたり、新しい薬剤開発をしたりという夢がある」と抱負を語った。(霍見真一郎)
「光免疫療法」特設ページ
「光免疫療法」関連ニュース