革新的なアプローチでがんを攻撃する「光免疫療法」が頭頸部がんの治療に保険適用されて1年。研究を経済的に支援し、薬剤開発を推し進めてきた楽天メディカルジャパンの三木谷浩史会長(56)に、今後の展開について聞いた。インタビュー後編の主な内容は次の通り。(霍見真一郎)
-モノを売るビジネスと命を救うビジネス。ひらめきは同じだったんですね。
「ただ、感覚としては全く違います。医薬品の開発というのは、安全性に留意し、コンプライアンスを守りながら慎重に進める必要があると思いながら進めています。これまで希望がなかった末期がんの患者さんも助けられるかもしれない、という期待もあります。ただ、時間はかかりますね。光免疫について医療業界の人に聞くと『9年でここまできたのは驚異的』と言われますが、IT業界の常識というか、感覚で言えば、よく9年間も忍耐強くやってこられたなと思っています。まだまだ先がありますから、協力者の力を借りながら進めていきたいです」
-光免疫を開発した米国立衛生研究所の小林久隆氏は西宮市出身です。そして、現場で頭頸部がんの治療を進める学会の理事長は、神戸大病院の丹生健一教授が務めています。
「僕は神戸がふるさとですから、何事も縁ですね。偶然に偶然が重なりました。思い起こせば(26年前の)阪神・淡路大震災は、当時サラリーマンだった私にとって人生観が変わった出来事でした。発生の翌日に神戸に帰って壮絶な風景を目の当たりにし、『意外と世の中は、はかないものだな』と思いました。神戸にはもう一度、震災前のような魅力を取り戻してもらいたい。そう思っています」