記者コラム〈サイドライン〉選手の懸ける思い、忘れない

2021/07/24 18:10

東京五輪の開会式前、国立競技場近くでインドを応援する紙を掲げる人。記者とも目が合い、互いにうなずき合った=23日午後5時22分、東京都新宿区

 神戸出身の俳優、森山未来さんが白い衣装に身を包み、舞っている。と同時に、外からは怒号が届く。「オリンピックやめろ、開会式やめろ」 関連ニュース 記者コラム<サイドライン>日本流のもてなしは不変 記者コラム<サイドライン>競泳小西、憧れの「あの人」追いかけて

 23日午後8時すぎ、東京・国立競技場のスタンド。これが2021年東京五輪の幕開けだった。
 選手団の入場が続き、イタリアが登場した時。スタンド後方で海外メディアの3人が立ち上がり、国旗を振り始めた。無観客の式典。彼らは記者であるとともに、「観客」の役目も担っていた。
 「日本」。開催国が最後に姿を現すと私も席を立ち、ささやかながら拍手を送った。コロナ禍に悩みながらも人生を懸けて己を磨き、この日にたどり着いた選手の思いは忘れずにいたい、と。
 着席し、前の中年男性に目をやると、ポロシャツの背面に「SURINAME」の文字。聞くと、南米大陸北部のスリナムから訪れた記者だった。人口58万人の同国の代表選手は競泳、自転車、バドミントンの3人だ。
 世界中、ありとあらゆる国・地域の選手が目指す舞台と思い知る。友好の証しに来年神戸である世界パラ陸上選手権と、ワールドマスターズゲームズ関西のピンバッジを贈った。(藤村有希子)
【特集ページ】東京五輪2020

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