フィギュア女子きょうSP 坂本を育てた「厳しめのママ」 中野、グレアム両コーチ

2022/02/15 05:30

昨年12月の全日本選手権で中野園子コーチ(左)、グレアム充子コーチ(右)に見守られ、演技に臨む坂本花織選手=さいたま市、さいたまスーパーアリーナ

 リンクの上では一人だけど、決して孤独じゃない。15日夜に行われる北京冬季五輪フィギュアスケート女子SP(ショートプログラム)。坂本花織選手(21)=シスメックス、神戸学院大3年=は、幼い頃から指導を受けてきた2人の恩師とともに、団体戦に続くメダルを懸けて銀盤に立つ。 関連ニュース 【写真】コーチから指導を受ける小学2年時の坂本花織選手 前回は緊張で胃腸炎…坂本花織「経験大きい、心強くなった」、三浦璃来「過去の自分たち超える」 北京五輪の活躍誓う この赤ちゃんがフィギュア五輪代表に 神戸の駅に坂本花織の手足形

 中野園子コーチ(69)とグレアム充子コーチ(62)。4歳の頃から師事してきた2人を、坂本選手は親しみを込めて「厳しめのママ」と呼ぶ。
 2人は坂本選手と同じく神戸フィギュアスケーティングクラブで学び、指導者の道に進んだ。リンク脇からジャンプの軌道や体の動き一つ一つに目を光らせ、少しの妥協も許さない。「中野コーチはいつも熱い。グレアムコーチのアドバイスは的確でグサッとくる」。一人が怒り、一人が温かく見守るような時もあれば、「ダブルパンチも。そういうときは『誰か慰めて』となる」と坂本選手は笑う。
 厳しいが、押しつけるような指導はしない。リスクを考えて高難度ジャンプの回避を決めたのは坂本選手自身。尊重した両コーチは「それなら演技力を伸ばすしかない」と密度の濃い振り付けと文字通り格闘してきた。
 拠点を置く神戸のリンクは冬場だけの営業で、ジムなどのスタジオやコーチ室もない。世界と比べて恵まれない練習環境の中、二人三脚で坂本選手や1月の四大陸選手権を制した三原舞依選手(22)=シスメックス、甲南大4年=ら、トップ選手を育ててきた。
 海外遠征にも割り振りながら同行する一方、「なるべく迷惑をかけないように」(中野コーチ)と、未来の五輪選手を夢見る子どもたちの指導にも手を抜かない。少人数で力を合わせて指導してきたチームは、中野コーチいわく「小さな町工場」だ。
 6位だった前回の平昌(ピョンチャン)大会はそろってリンクサイドに立ったが、新型コロナウイルス禍の今大会は人数制限でグレアムコーチが帯同できていない。「2人のおかげでここまでやってこられた」と、坂本選手は祖母が手作りした、グレアムコーチの顔写真付き応援うちわを持ち込んだ。
 「成長した姿を見ていただきたい」と中野コーチ。SPの滑走順は、重圧のかかる最終滑走に決まった。離れていても、神戸組の固い絆で一つになって挑む。(山本哲志)
【特集ページ】北京五輪兵庫

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