【河合美智子の但馬漫遊記】雨でも傘を差さない?

2022/05/31 05:30

(河合美智子さん撮影)

 兵庫県・但馬には「弁当忘れても傘忘れるな」という格言がある。天気が変わりやすく雨の多い日本海側の地域で広く言い伝えられている言葉なのだが、神奈川出身の私は聞いたことがなかった。食いしん坊の私からすると相当なことだ。ここで暮らすなら傘だけは忘れてはいけないのだと肝に銘じた。 関連ニュース <河合美智子の但馬漫遊記>生野銀山の歴史、肌で感じ 「かなしきデブ猫ちゃん」、出版記念し4月22日に神戸でイベント 神戸新聞連載の創作童話 【河合美智子の但馬漫遊記】大工歴50年、棟梁の神業

 暮らし始めると確かに雨が多い。山陰と言うだけあって特に冬の間は厚い雲が垂れ込めてどんよりとしている。しかし、東京にいた時と違い、あまり憂鬱(ゆううつ)な気持ちにはならなかった。
 だって一つとして同じ雨がない。様々な表情を見せてくれドラマチックなのだ。雲も風もなんと絵になることか。天気の境目というのを意識したのもはじめてだ。雨の端っこを通り抜けるときはワクワクする。それと何と言っても太陽が出たときのあの幸福感!
 ただ、3年半生活した私の統計によると但馬の人はほとんど傘を使わない気がする。少々、いや結構な雨量でも差さないように思うのだ。
 だから私は、教えに従い傘を忘れないようにはしているが、雨が降ってもあえて差さないよう心掛けている。車に傘を置いたままフードをかぶり歩き出す。そして少し早足になりながら「私もすっかり但馬人だ」と感慨に浸るのだ。
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