【河合美智子の但馬漫遊記】植物園にある“真の共生”

2022/09/30 05:30

和池の大カツラと藤原さん(河合美智子さん撮影)

 氷ノ山に降った雨は地中深く潜り、尾根筋を伝って磨かれる。そして長い年月を経て地表へと湧き出す。一里(約4キロ)四方の水を集めるというカツラの木の不思議。 関連ニュース <河合美智子の但馬漫遊記>生野銀山の歴史、肌で感じ 「かなしきデブ猫ちゃん」、出版記念し4月22日に神戸でイベント 神戸新聞連載の創作童話 【河合美智子の但馬漫遊記】大工歴50年、棟梁の神業

 たじま高原植物園には建設当時、大変な逆風が吹いていた。地元の人たちからすると山の中にわざわざ植物園を造るなんて到底理解できない。税金の無駄遣いだ! 自然破壊だ! と相当叩(たた)かれた。しかしリゾート開発の構想もあったという瀞川平の自然を守るためには、和池の大カツラを保護する植物園建設は必須。村岡の未来を見据えたプロジェクトだったのだ。県職員・森正さんの強い信念に支えられ、旧村岡町役場職員だった藤原博文さんは苦悩しながらも何とか7年間走り続けた。グランドデザインを手がけた今竹翠さんはこの土地の起伏を生かした庭園を設計。手を入れるのは最低限。どこにも無理がなく、生き生きとした自然林が広がっている。
 NHKドラマ「プリズム」の中で「日本の里山には多様性がある」「人が手を入れることによって自然の多様化が生かされる」という台詞(せりふ)があった。まさにこの植物園が成し遂げていることではないか。真の共生がここにはある。ようやく時代が追いついてきた。
 このサンクチュアリ(聖域)を失くしてはいけない。
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