国鉄篠山線廃線50年(上)鉄路の名残あちこちに 遺構地図、再現ジオラマも

2022/03/01 05:30

半世紀前の1972年2月29日に運行された篠山線の「お別れ列車」(松本剛さん提供)

 「え? もう50年たちましたか。お別れ列車は覚えてます。当時は高校生でした」。兵庫県丹波篠山市の酒井隆明市長(67)は驚きつつも懐かしむ。旧多紀郡内を横断していた国鉄篠山線のことである。最後の運行は1972年2月29日。廃線から半世紀、鉄路の名残を探し各地を訪ねた。(堀井正純) 関連ニュース 【写真】国鉄篠山線篠山駅のホームと駅舎 列車を待つ人、下校する生徒…50年前の国鉄駅、ジオラマで再現 丹波篠山・福住駅 3年半かけ住民が制作 国鉄篠山線廃線50年(下)面影は3キロの「八上ストレート」自転車愛好家らに人気


 篠山線は太平洋戦争中の1944年に開業。現在のJR篠山口駅から同市福住の福住駅までの17・6キロを結んだ。当初は山陰線園部駅(京都府南丹市)まで延伸する計画もあったが幻に。営業距離が短く、行き止まりのいわゆる「盲腸線」である。戦後、沿線人口の減少や自家用車の普及、貨物取扱量の減少などで赤字路線となり廃止された。
 耕地整理などで、路線跡の大半は道路や農地になった。駅舎も失われたが、6駅のうち、村雲、福住の駅跡近くに、記念碑が建立されている。
 写真や資料など、ゆかりの品を集めた記念コーナーがあるのは城東公民館(丹波篠山市日置)。篠山線の歴史を調べている職員の松本剛さん(62)が中心になって設けたものだ。
 廃線跡巡りを楽しむ観光客向けに、遺構を記した地図も作成した。「訪れるのは、鉄道マニアの廃線愛好家と漫画ファンが多い」と松本さん。
 聞けば、山陽本線、福知山線など、鉄道の路線を擬人化した漫画「青春(あおはる)鉄道」に篠山線が登場するらしい。松本さんは「ミュージカル化もされた漫画で、熱心なファンが東京など関東からも聖地巡礼でやってきます」と笑う。
 シンボル的な遺構の一つ、コンクリート橋(同市北嶋)を案内してもらった。実際に使われていたレールと枕木を探し出し、松本さんらが2014年、開業70年を記念し、愛好家らと橋の上に鉄路の一部を再現した。「廃線後、枕木もレールも市民に払い下げになって、探せばあちこちで再利用されてますよ」と松本さん。
 終着駅のあった福住地区の旧福住小学校を活用した交流施設「SHUKUBA(しゅくば)」では、駅舎や列車など、福住駅周辺を再現したジオラマを展示中。往時の面影を伝えてくれる。
 150分の1スケールの精巧な作品。地元住民らが約3年半がかりでこつこつと手作りし、今年完成させた。制作した一人、西脇丈洋さん(48)は、「廃線時に僕も生まれていなかったが、線路跡で遊んだ記憶はある。若い人にも篠山線の歴史を知ってもらいたい」と期待している。

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