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 新型コロナウイルスが猛威を振るう中、ワクチン接種への期待が高まっています。65歳以上の高齢者を対象にした接種が始まったワクチンについて、接種の流れや兵庫県内市町の接種時期を示すとともに、Q&Aで手続きや効果、副反応などを解説します。

コロナQ&A

新型コロナワクチン接種の流れ
  • Q.そもそも、接種の狙いって?

    • A.免疫の仕組みで自分と周囲を守る

       ウイルスは、人の細胞に侵入(感染)し、乗っ取って自らの複製を大量に作らせます。新型コロナウイルスの場合、表面の突起(スパイク)が、人の細胞にくっつき、細胞内に入るのです。ウイルスの内部には、塩基約3万個で構成される「設計図」(RNA)が入っています。ウイルスが細胞内に入ると、複製が自動的に数百から数千個作られ、増殖していきます。
       今回政府が想定しているワクチンは、ファイザー製、アストラゼネカ製、モデルナ製の3種類。ファイザーとモデルナは、「メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン」といって、ウイルスの突起部分(スパイク)を作るmRNAを人工的に作って投与し、あらかじめその突起にくっつく「抗体」を作らせます。すると、本物のウイルスが入ってきたときに、迅速にその抗体がくっついて、細胞への結合を邪魔します。
       一方、アストラゼネカ製は「ウイルスベクターワクチン」と呼ばれ、コロナではない、病原性を消した、別のウイルスの内部に、突起を作る設計図を入れて投与します。RNAワクチンと同様、あらかじめ体に抗体を作らせる仕組みです。
       コロナワクチンは2回打ちます。人の体は、初めての異物を覚えて抗体を作るには時間がかかりますが、2回目は、記憶していた細胞が即座に抗体を大量に作ることができるためです。現時点で唯一承認されているファイザー製の場合、3週間空けて同じワクチンを打ちます。
  • Q.タイプさまざま、どんな違いが?

    • A.欧米4種類が実用化、それぞれ長所

       新型コロナウイルスに対抗するため、さまざまなタイプのワクチンが開発されています。世界で260を超える開発計画があり、4月初旬時点で、欧米で開発された4種類や中国、ロシアの製品が実用化されています。
       日本では米ファイザー製の接種が始まっています。他に米モデルナ、英アストラゼネカのワクチンが承認されました。ファイザー製とモデルナ製は新型コロナの遺伝情報を持つ物質が主な成分です。アストラゼネカ製は体内に遺伝物質を運ぶのに害のない別のウイルスを運び屋として利用します。
       ファイザーやモデルナのワクチンは感染、発症、重症化の高い予防効果を示したデータがあります。アストラゼネカ製は保管がしやすい上、多くを国内で生産するため、安定供給が見込めます。どれが良いかは見方によって変わります。政府は複数が承認された際に、個人が希望するワクチンを選べるようにするかどうか、明確な方針を示していません。
       欧米では米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製も広く流通しています。1回の接種で済むのが特徴です。
       国産ワクチンはどうでしょうか。安全性や有効性を調べる臨床試験(治験)はアンジェスや第一三共、塩野義製薬、KMバイオロジクスなどが始めています。ただ実用化まではまだ時間がかかりそうです。
  • Q.接種しても感染する?

    • A.国内でも感染例、予防対策忘れずに

       新型コロナウイルスワクチンを接種した後も感染する恐れはあります。
       現在、日本で使用されているファイザー製ワクチンでは、2回目の接種から半年後までの有効性が91.3%であったとする臨床試験の分析結果が発表されています。治験に参加した4万6千人を対象に発症の有無を調査しました。
       未接種の人では850人が発症した一方、接種者で発症したのは77人にとどまったため、発症のリスクを大きく減らすことができると考えられています。海外の事例から、感染予防にも効果があるという結果も出ています。
       ただ、100%発症しない、感染しないというわけではなく、日本でも接種が進んでいる医療従事者の中で、接種後に感染した事例があります。厚生労働省は「接種後も引き続き、感染予防対策をしていただきたい」としています。
  • Q.高齢者が優先なのはなぜ?

    • A.重症化を予防、クラスター対策も

       新型コロナウイルスのワクチン接種は、医療従事者を除く一般国民の場合、65歳以上の高齢者から始まりました。
       感染した場合、重症化するリスクが高いためです。高齢者の感染を防ぎ、介護施設のクラスター(感染者集団)発生を抑えることで、病院の病床使用率の上昇を避ける狙いもあります。
       高齢者の後は、64歳以下で基礎疾患がある人らが優先されます。これも同じ考え方からです。海外では、行動が活発でウイルスを運びやすい若者を先に打つべきだという指摘も一部にあるようです。
       65歳以上の高齢者を厳密に言うと、1957年4月1日以前に生まれた人で、全国で約3600万人、兵庫県で約168万人と推計されています。
       接種事業は市区町村が主体で、それぞれで対応が異なります。クラスターのリスクが高い介護施設から始めるところが多いのですが、予約で早い者勝ちという先着順、予約殺到回避で年齢の高い順といった基準を設ける自治体もあります。
       4月中はワクチンの量が十分ではなく、限定的です。全国の市区町村でワクチンが豊富に届き始める5月からは、各地で本格化しそうです。必要書類を持参し接種会場に足を運んでもらい、予診から接種、副反応の有無の確認までを各地で円滑に進められるか。1人2回接種する必要があり、ワクチンの供給も大丈夫なのか。前例のない国家的事業は課題がいっぱいです。
  • Q.変異株にも効くの?

    • A.ファイザー製、効果ありとの実験結果

       ファイザー製ワクチンは、「メッセンジャーRNA(mRNA)」という遺伝物質を投与する、新しいタイプのものです。
       兵庫県内で感染が急拡大している英国株でもワクチンが効きにくくなることはほぼないと思われますが、株によっては効きが悪くなる可能性があります。
       一般論として、小さな変異でワクチンの効果がなくなるというわけではありません。また、ファイザー製ワクチンでは、変異株にも作用する抗体が作られた、といった実験結果も発表されています。
       変異株は、若年者の間でも感染が広まっているようですが、公費での接種対象は、接種日に満16歳以上の人です。ファイザー製ワクチンは16歳以上が薬事承認の対象で、国内では有効性や安全性の検証が十分ではありません。
       将来的には対象年齢が広がる可能性もあります。
  • Q.在宅医療・介護の患者はどこで?

    • A.デイ施設や訪問医も選択肢

       在宅医療や在宅介護の患者は、デイサービスなどに通う日がある場合は、施設でワクチン接種することも選択肢です。寝たきりなど、接種会場に来られない人は、訪問した医師が接種する場合もあるでしょう。
       接種には本人の意思確認が必要ですが、認知症などで難しい場合は、家族などに協力してもらうことになります。本人が接種を希望しているものの、何らかの理由で本人の自署が困難な場合は、家族などが代筆することは可能です。
       現在接種が進んでいる医療従事者や65歳以上の高齢者に次いで、高齢者施設の従事者も優先接種対象です。高齢者施設には、介護老人福祉施設や養護老人ホーム、障害者支援施設などさまざまな形態があります。
       また、市町によっては訪問介護などのサービス従事者も、優先対象になる場合があります。その場合は、利用者がコロナに感染した場合もサービスを提供する意思がある人のみ、優先接種の登録ができます。その意思がない場合は、一般枠での接種となります。
  • Q.アレルギー体質でも大丈夫?

    • A.原則OK、念のため会場で30分待機

       食物アレルギーや気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、花粉症などという理由だけで、接種を受けられないわけではありません。また、接種するワクチンの成分に関係ないものに対するアレルギーを持つ人も接種は可能です。
       ただ、これまでに薬や食品などで重いアレルギー反応を起こしたことがある人は、接種直後に調子が悪くなった場合に速やかに対応できるよう、通常より長い30分間、接種会場で待機することになります。
       4月9日に国が公表したデータでは、重いアレルギー反応の「アナフィラキシー」は0.007%程度しか発生しておらず、アナフィラキシーで死亡した事例は国内ではありません。
       一方、2回目の接種で38%程度の人に37.5度以上の発熱がみられます。正常な免疫反応で、ほとんどの人が1日か2日で改善するので心配はいりませんが、高齢の2人暮らし世帯で一緒に接種すると同時に発熱する場合も考えられますので、接種日をずらすなど工夫してもいいでしょう。
  • Q.64歳以下はいつから?

    • A.目標は夏ごろ、供給量次第で流動的

       国は6月末までに、全国の高齢者3600万人分のワクチンを供給する見込みです。菅義偉首相は、7月中の全高齢者への接種完了を目指す考えを示していますが、自治体によっても終了時期に差が出てきそうです。
       高齢者の次は、64歳以下の基礎疾患がある人が優先されます。慢性の呼吸器の病気や心臓病、重症心身障害などがある人で、全国で約1030万人いるとされています。
       その次は、高齢者施設などの従事者で全国約200万人います。60~64歳の人も優先され、全国で約750万人とされています。16~59歳の一般住民は、その後に接種が始まることになりますが、ワクチンの供給量などによっては、さらに優先順位が細分化される可能性もあります。
       このように、夏ごろには64歳以下で接種が始まり、秋には本格化するとみられます。国は全対象者のワクチンが「9月末までに調達できる見通しになった」としていますが、具体的な供給量やスケジュールは分からず、接種がどう進むのかは流動的です。
  • Q.接種したくない場合は?

    • A.妊産婦は努力義務適用外

       国は、新型コロナウイルスのワクチン接種について、法律に基づく努力義務を課しています。ただ、接種しないという判断を否定するものではありません。
       妊娠中や授乳中の人は、努力義務からは外れていますが、接種することはできます。妊婦または妊娠している可能性のある女性は、海外の事例などから現時点で特段の懸念が認められているわけではありませんが、安全性に関するデータが限られていることがあります。
       授乳中の女性についても現時点で特段の懸念が認められているわけではなく、海外でも接種対象とされています。接種するか悩む場合は主治医と相談してもいいでしょう。
       コロナに感染した経験者も接種することはできます。ただ接種まで一定期間をおく必要がある場合があり、いつから接種できるか不明な場合は主治医に確認してください。
       もしいったん接種しないという判断をしても、後に考えが変わって希望する場合は、来年2月までなら接種することができます。
  • Q.持病あり、優先接種の対象に?

    • A.入院・通院の人限定、予診票で自己申告

       ワクチン接種のスケジュールでは、65歳以上の高齢者に次いで「基礎疾患(持病)のある人や、基準を満たす肥満の人」が優先されることになっています。慢性の呼吸器の病気や慢性の心臓病など14項目が例示されており、基礎疾患の有無は、接種会場で医師に渡す「予診票」で確認します。
       自己申告のみで、診断書は必要ありません。基礎疾患は見た目で判断しにくく、集団接種会場で体重を量るとは考えにくいですが、必要があるときは、問診で病気や治療の状況などを確認します。
       ただ、基礎疾患の優先接種は「通院・入院者」に限るため、予診票にも「医師に今日の予防接種を受けてよいと言われたか」という質問があります。ここで一定医師の診断を受けた疾患であるということを確認する形になっています。
       基礎疾患のある人は重症化しやすいから優先する、という趣旨を理解する必要があります。自分の病気が優先接種にあたる基礎疾患か迷う場合は、かかりつけ医に相談を。
  • Q.接種後に気を付けることは?

    • A.倦怠感や発熱、体調に注意

       ワクチン接種後は、接種した部分が痛んだり、倦怠(けんたい)感や発熱などが生じたりすることもあるので、当日や翌日は無理をしないようにした方が良いでしょう。
       体調が良ければ、車の運転をしても問題ありません。ただ、体調に異変があったり、不安があったりする場合は取りやめましょう。
       「接種した日、お風呂に入れますか」といった質問がよくあります。入浴したかどうかで、免疫のつき方や副反応の違いを比較した研究はないそうですが、体調に変化が起きる可能性は低いと考えられています。
       ワクチン接種により感染症発症の予防が期待されています。その一方で、接種した人から他人への感染をどの程度予防できるかはまだ分かっていません。厚生労働省は引き続き、マスクの着用、消毒の励行、3密(密集、密接、密閉)の回避を呼び掛けています。
  • Q.住民票と違う所に住んでる人は?

    • A.やむを得ない場合は居住地で

       ワクチンの接種は、原則として住民票所在地の市町ですることになっていますが、やむを得ない事情で住民票所在地以外に長期滞在している人は、その居住地で受けることができます。
       原則として、接種をする市町に事前の届け出が必要ですが、届け出の省略が認められる人もいます。
       届け出が省略できる人として国が挙げているのは、病院の入院患者や高齢者施設の入所者、基礎疾患のある人が主治医の下で接種する場合などです。接種を希望する場合は各医療機関や施設に相談してください。
       届け出が必要な人としては、出産のために里帰りしている妊産婦▽単身赴任者▽下宿中の学生▽ドメスティックバイオレンスやストーカー行為の被害者―などが挙げられています。
       希望者は「住所地外接種届」を記入し、自治体から届いた接種券(写しでも可能)とともに提出します。内容確認後に「住所地外接種届出済証」が発行され、接種を受けることができます。厚生労働省のインターネットサイト「コロナワクチンナビ」でも手続きができます。

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