ニャーン! マルだよ。兵庫五国をめぐるオレたちの新しい冒険物語「かなしきデブ猫ちゃん マルの真夏のプレゼント」が、いよいよ来週29日からスタートします。最初の旅が桜の季節に終わったから、続きはやっぱり夏のお話になるのかな。誰に、どんなプレゼントをあげるんだろう。作者の早見和真さんに聞いてみたよ。

「かのうかりんさんの描いてくれたケンタ(右のイラスト)は僕のイメージにぴったり」と話す早見和真さん=神戸新聞社(撮影・鈴木雅之)
-オレ、1作目の最後に「もっと広い世界を見たい」と言って旅立ったはずなんだけど…?
「兵庫県内にある41市町のうち、1作目では14市町を回ったよね。だから次の旅では、できるだけまだ行っていない土地をたどりたいと思ってる。2作目は西宮市から始まるんだけど、僕の中で阪神エリアには“子育て王国”って印象があって。もちろんほかの地域も含めてだけど、子育てに熱心なお母さんやお父さんも巻き込みながら、マルのメッセージをみんなに伝えていきたいと思っています」
-これまでにも愛媛のアンナや神戸の桜子という人間の友達がいたけど、今度は男の子なんだね。
「そう、ケンタ君。クールなオス猫のマルによく似た人間のキャラクターが出てきたらいいな-と前から思っていてね。実は僕自身も子どもの頃、すごく太っていたんだ。でも別に痩せたいとも思わなかったし、友達もいっぱいいたよ。周りのはやし立てる声がその子を苦しめるだけで、太っていること自体は全然恥ずかしくなんかないんだから」

小学3年生のころの早見さん。「僕の人生の黄金期」だったそう
-どうして人間たちの世界では「デブ」が悪口になっているんだろう?
「デブに限らず、言葉で人を傷つけることの本質を考えてみてほしい。大事なのは、どういう思いを込めてその言葉を使っているのか。ただ言葉を狩るだけじゃ、その人間の中身は変わらないでしょ。自分の頭で考えて、理屈を持ってデブを批判するならすればいいし、それに対して太っている子はきちんと反発すればいい。今の世の中を覆っている、無批判な社会通念を打ち破りたいんだ」
-オレからの「プレゼント」も、そういうことに関係があるんだね。
「具体的にプレゼントするのは、マルの勇気を象徴する『モノ』なんだけど、本当に届けたいのはマルの思いや言葉、次の1歩を踏み出すためのきっかけです。つまりは、マルが自分の生き方を見せるっていうことかな。マルは僕の理想とする人間像(ネコ像?)なので、君の生き方をカッコいいと思って、チャレンジしてくれる人を増やしたい」
-オレの冒険物語を読んでくれた子たちが、みんな一緒に旅をして、成長していくんだね。
「愛媛編の1作目を小学6年で読み始めた子が今、高校1年になり、僕のほかの小説も全部読んでくれています。若い人は本や新聞を読まなくなっているというけれど、そういう空気に毒されるより、未来の読者を自分の手で育てていけばいい。兵庫編の絵本を持って県内各地を実際に旅してくれる人が現れたなら、この物語は読者とともに成長していると言えるんじゃないかな」
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兵庫編第1弾「かなしきデブ猫ちゃん マルのはじまりの鐘」の絵本