デブ猫

第23回

2024/10/12 12:55

前回ぜんかいまでのあらすじ】


 マルは、赤穂あこうニャン頭領とうりょう大石おおいしクラニャすけ姫路城ひめじじょうひめ、おつる結婚式けっこんしき参列さんれつするため、ニャンたちと高砂市たかさごしへ。道中どうちゅう万葉まんようみさきやたつのみちえき「みつ」にり、よくべた。そして太子町たいしちょう斑鳩寺いかるがでらでコウズケニャすけたび理由りゆうかす。すると突然とつぜんシカがはなしんできた。「それってつまりひかりのトンネルのことだね。一月十七日いちがつじゅうななにちにのみあらわれる」


◆    ◆


 シカは「タイシくんともうします」と名乗なのった。


 自分じぶんを「くん」づけするのはへんだとおもったが、いまにするべきはそれじゃない。


「そのトンネルはなんなのだ?」「なぜ一月十七日いちがつじゅうななにちか?」「どんなトンネルなのか?」「本当ほんとう大切たいせつひとえるのか?」と、ひかりのトンネルをるというタイシくんに、十人じゅうにん仲間なかまたちがいっせいに質問しつもんげかける。


 タイシくんは、すべての質問しつもん次々つぎつぎこたえていった。


普通ふつうのトンネルとはちがうとく」


一月十七日いちがつじゅうななにち我々われわれにとって大切たいせつ


震災しんさいにまつわるトンネルだ」


大切たいせつひとえるのはそのだけ」


 オレはなによりタイシくんが十人じゅうにんはなしをすべてきわけていることにビックリした。


 あんぐりとくちひらいたオレをて、タイシくんはくすりとわらう。


 オレはあわててかえり、ニャンたちにおねがいした。


「ちょっと二人ふたりきりになってもいいかな?」


 みんなは「ならば我々われわれはマルコム殿どののことをさぐってみよう」と、いっせいにそのはなれていった。




 オレとタイシくんはひときわ目立めだ三重塔さんじゅうのとうまであるいていき、さくまえこしろした。


「オレはマル。三歳さんさいのハチワレねこだよ」


わたしはタイシくん。三歳さんさいのニホンジカだ」


「へぇ、おなどしなんだね。なのに、タイシくんはすごいね」


「すごいとは?」


「なんかいているし、みんなの言葉ことばきわけちゃうし」


「そんなことよりもマル、本当ほんとうひかりのトンネルをさがしているなら、もうあまり時間じかんはないぞ」


一月十七日いちがつじゅうななにち。そのがどうして大切たいせつか、オレもってるよ」


 いまからおよそ三十年前さんじゅうねんまえ神戸こうべおおくの人間にんげんが、そしてネコがくなっただ。


 タイシくんはこくりとうなずいた。


今日きょう十二月三十一日じゅうにがつさんじゅういちにち。あと二週間にしゅうかんほどしかない。ちなみにわたしもくわしい場所ばしょらないのだ」


震災しんさい関係かんけいした場所ばしょなんだよね? おおきなヒントだよ」


 オレはくのをかんじた。


 それをゆるすまいとするように、タイシくんはくちもとにみをかべた。


今夜こんやはここでよるかすといい。大晦日おおみそかだ。一緒いっしょいのりをささげよう」


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