深ヨミ

集落をのみ込んだ山津波(番外編)

2021/07/07 20:00

※1976年9月14日付朝刊の記事から転用しています。




「山が抜けるぞ-」。不気味な地鳴りを耳にした区長のマイクが叫んだ。崩れやすいから、この地名がついたと伝えられる「抜山」。〝危機〟は住民の口から口へ、突っ走った。「年寄りや子供の手をつないで逃げるんや」「何も持ち出すな。急げ」-。十三日朝、兵庫県宍粟郡一宮町の奥まった集落を襲った山津波が民家など四十六戸をのみこむのに三十分とかからなかっった。動きがとまったとき、約四百人の住民、救助隊員らは北へ、南へ完全避難。奇跡とも言える脱出劇だった。





二次災害を防いだ立役者の一人は機転をきかした地元区長だった。消防団員らにまじって地元指揮をしていた福池区長の山本茂一さん。救助作業員の昼の炊き出しをと、三方小にもどり、抜山の山頂を見ると山が割れるように崩れるのが見えた。大変なことになる。「山が抜けるぞ。作業をやめて逃げろ」携帯マイクを手に走った。さらに、住民から住民へ。戸口から戸口へ。「山が抜けるぞ」「落ちる、逃げろ」の叫びが谷間にこだました。


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