深ヨミ

<13R> 夜の公園、自販機の照明で練習

2021/12/07 17:30

【写真上】公園で自動販売機の明かりに照らされながら練習する=尼崎市内


■“無所属”状態


 2010年9月、野中悠樹(43)が破ったドミトリー・ニクーリンは、日本では当時まだ団体として認められていなかった世界ボクシング機構(WBO)のランカーだった。このため、野中は関係者の力を借りて、国内認可団体の一つ、世界ボクシング協会(WBA)の11位として、初の世界ランキング入り(15位以内)を果たす。「ここで初めて世界を見据えられた」と野中。32歳のときのことだ。


 しかし、好事魔多しとはこういうことを言うのだろうか。この後、野中と桂伸二トレーナー(50)はジムの移籍を4度も経験することになる。日本でプロボクシング選手が活動するには、ジムに所属することが原則だ。一つのジムで続けられるに越したことはないが、方向性の違いなどで移籍はやむを得なかった。デビュー当時から籍を置いた尼崎ジムを離れたのは、11年のこと。次のジムもすぐに分裂し、15年にはまた移籍を余儀なくされてしまう。


 去ることになったジムでのトレーニングは、やはりやりづらい。新しい所属先が見つかるまでの間、2人はしばしば、JR尼崎駅近くの尼崎記念公園で練習した。屋外通路の少し広いスペースを使った。時間は夜。近くのテニスコートの照明と自動販売機の明かりを頼りに、ミットを打った。通路は硬いれんが敷きで、パンチを打つごとに踏み込む野中の靴底は、どんどんすり減っていった。


 残り文字数 428  文字 記事全文 1028  文字

特集記事一覧
PC SP