いつも通り窓を開けて、空気を入れ替える。温度計に目にやった。部屋中に生い茂るこの植物は、温度管理に最も気を使う。
田中二郎(35)=仮名=は、この「工場」の世話係を任されていた。何しろ株一つ一つが大きな利益を生む魔法の草だ。手塩にかけて育ててなければならない。
「工場」には仲間も出入りしていた。そろいのポロシャツを着て、自分たちのことを「BIRDMAN(バードマン)」と名乗った。
稼いだ金で高級時計や高級車を買い、時折「社員旅行」と称して豪遊した。
そんな場所に警察が突如、踏み込んできたのは2020年秋。田中も大麻を栽培した疑いで手錠をかけられた。兵庫県三田市の郊外にあった大麻の栽培工場。それらの拠点からは大麻草1600株が見つかった。兵庫県警が押収した量としては過去最大だった。
■悪友との再会
田中が大麻を初めて吸ったのは18歳の時だった。地元の先輩の家で勧められたのがきっかけだった。
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