【2】「学園の飯、うまい」感謝で児童施設の壁埋まる

2018/02/17 10:00

みんなで「いただきます」

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 午後6時。夕食を取り分け終えた職員大庭英樹が声を張り上げた。リビングから、自分の部屋から、子どもたちが集まってくる。
 「はよゲーム終われや」。中学3年の大和が怒鳴った。小学2年の大雅がしぶしぶ席に着く。「いただきます」
 この日のメニューはかぼちゃコロッケにエビのソテー。みんな大好物だ。手のひらいっぱいの茶わんに山のような白ご飯。中高生がぺろりと平らげる。
 「学園の飯、うまいやろ」。中学2年の太一がのぞき込むように尋ねてきた。即座に「まずい時もあるけどなー」。照れくさそうに大声を出した。
 キッチンの壁には小さな紙がびっしり。用事で個別に食事を取る子のために、食器に添えた名前入りのメモだ。自分たちで張り付けた。「おいしかった」。感謝の数だけ、壁が埋まっていく。
 児童養護施設「尼崎市尼崎学園(尼学)」。親と暮らせない約40人の子どもが暮らしている。同じ建物内だが、生活するのは「ユニット」と呼ばれるスペース。小学生以上と幼児用に分かれる。
 小学生以上は6人単位。六つの個室と居間、台所、トイレなどがある。「6LDK」のようなイメージで、玄関もユニットごとに別々。「兄ちゃん」「姉ちゃん」と呼ばれる職員が、午前6時45分から午後10時まで常駐する。
 「そらちゃんから風呂入ろか」。皿洗い中の大庭が声を掛けた。入浴は小さい子順。最年少の蒼空(そら)がおどけながら風呂場に駆けていく。他の子はゲームやネット。1日で最もゆったりした時間。
 「ユニットになってから落ち着いた」。職員が口々に言う。建て替えは4年前。それまで個人の空間はなかった。(敬称略、子どもは仮名)

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