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一時保護児童に安心の場を 民間養護施設が県内初の専用スペース

2021/06/26 13:30

 児童虐待や家庭での養育困難などを理由に、兵庫県のこども家庭センター(児童相談所)が一時保護する子どもが増える中、民間の児童養護施設「子供の家」(尼崎市若王寺3)に、一時保護児童が過ごす専用スペースができた。県立の一時保護所は中央こども家庭センター(明石市)に併設の1カ所しかなく、現在“パンク状態”。児童養護施設が専用のスペースを設けるのは県内初といい、定員6人で今春から運用を始めている。(中島摩子)

 県によると、2019年度の一時保護数(神戸、明石市除く)は延べ1767人で、15年度の倍近くに増加している=グラフ。

 その中で、19年度に県立の一時保護所に入所したのは409人にとどまり、それ以外は県から委託を受けた民間の児童養護施設や乳児院の空き室などで過ごしたという。

 県は23年度にも川西市に一時保護所を新設する方針だが、保護児童は増える一方で十分に対応できていない。

 「子供の家」ではこれまでも、こども家庭センターから依頼を受け、空き室などで一時保護児童を預かってきた。17年度は23人、18年度は22人、19年度は42人。19年度は2歳から中学3年の男女で、期間は数日から57日間とさまざまだった。身体的虐待やネグレクト(育児放棄)など、虐待ケースが半数超という。

 そんな中、東谷聡美施設長(56)は、特に阪神間で一時保護が多いことに加え、入所児童のそばで一時保護児童が入退所を繰り返せば、入所児童が落ち着きを失う懸念があることなどから、専用スペースを用意することにした。

 「子供の家」ではもともと入所児童向けに、6人ごとの小規模グループケアを採用しており、かつて入所児童用だったスペース(約140平方メートル)を一時保護専用にした。リビングとキッチン、風呂、洗面台があり、ベッドと学習机を備えた6人分の個室がある。

 県に届け出て、4月1日に開所した。依頼が相次ぎ、6月上旬は定員いっぱいだったという。

 専任のスタッフが付き、子どもたちはリビングで一緒に朝食を食べ、午前中はプリント学習。午後は工作をしたり、屋外で遊んだりし、夕食後は1人ずつ入浴している。

 東谷施設長は「自分はこの先どうなるのか、不安に思っている子どもたちが、少しでも落ち着いて生活できるよう、支えたい」と話している。

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