創る 生を見つめて
姉への思い 歌で伝えた

田代作人(さくと)さん (30)
フォークシンガー/神戸市中央区

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創る 生を見つめて
姉への思い 歌で伝えた

田代作人(さくと)さん (30)
フォークシンガー/神戸市中央区

 26歳の時、大手レコード会社からCDを出しました。きっかけは、震災で亡くなった姉にささげた曲でした。
 5人きょうだいで最年長だった姉は当時、高校2年生。家族を支える存在でした。神戸市東灘区の自宅が全壊した時、一人だけ下敷きになりました。
 「お姉ちゃんはみんなの代わりになってくれたんや。だから一生懸命、生きなあかん」。母はずっとそう言ってました。でもその後、家族の歯車はおかしくなった。父は勤め先の経営悪化で退職。両親は経済的な理由で離婚し、きょうだいは散り散りになりました。
 20代初めの僕は、音楽をやりたいという思いはあるけど、職にも就かず、路上で生活するような日々。でも数年ぶりに姉の墓参りをした時、はっと思ったんです。今の生き方では顔向けできないって。姉への曲は、その直後に書き上げました。
 デビュー後、震災を売り物にしている、と言われました。僕自身、話題性が先行していることを感じていました。だからここ数年は、経験を積もうと路上でも演奏しています。一度きりの人生だから悔いは残したくない。それが、生きたくても生きられなかった姉の願いでもあると思うんです。(小林良多)


2014年9月19日掲載
写真撮影場所:

神戸市中央区下山手通2、ライブハウス「神戸バリット」