根差す 東北の大地に
俺、がんばんなきゃなって

岩瀬龍三さん (50)
ラーメン店経営/岩手県大船渡市

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根差す 東北の大地に
俺、がんばんなきゃなって

岩瀬龍三さん (50)
ラーメン店経営/岩手県大船渡市

 3月11日は誕生日なんです。4年前、津波で家を流されました。家族は避難して無事。命があるだけでありがたかった。妻の古里、岩手県大船渡市でラーメン店を開いて15年。店は残ったけど、町は...。避難所の中学校で抜け殻みたいになって寝ていました。
 塩おむすびだけが配られる日々。温かいものを、とラーメンの炊き出しをしました。約300食を作り終えると、中学生が拍手でねぎらってくれて。「ありがとう、ありがとう」と拝むおばあさんもいた。俺、この仕事、がんばんなきゃなって思えたんです。
 阪神・淡路大震災の時は、妻と東京暮らしでした。出産を控えていて、神戸市垂水区の実家には帰らなかった。ずっと負い目に感じていました。だから、ここでできることを精いっぱいやりたい。大船渡らしいラーメンを作る。娘と息子にとってはこの町が古里。ずっと好きでいてほしいから。
 岩手の小麦を使った自家製麺、鶏がらは県産の南部どり、地元の海で取れた毛ガニ...。だしには瀬戸内産の煮干しも使っています。ずっと見てきた兵庫の海を思いながらね。そう、これが今の、俺の味。(聞き手・三浦拓也)

 今月は、発生から4年となる東日本大震災の被災地で生きる、兵庫ゆかりの人たちを紹介します。


2015年3月 4日掲載
写真撮影場所:

岩手県大船渡市猪川町千刈