ガーじぃが見たスマスイ 一部閉館を前に(3)ラッコ館
2021/02/18 05:30
水面付近のガラスは貝をぶつけた傷で白くかすんでいる=神戸市須磨区若宮町1、須磨海浜水族園(撮影・秋山亮太)
神戸市須磨区の須磨海浜水族園、スマスイ言うんやけど、ワシはそこの「世界のさかな館」に住んどる。鼻が長い淡水魚「ロングノーズガー」じゃ。生まれも育ちもスマスイ。1977年生まれじゃから…今は43歳。誕生日は3月1日で、もうすぐ44歳になる。人間やったら働き盛りやけど超高齢魚なんじゃ。2014年から世界最高齢の記録を更新し続けとる。なんで今回ワシが出てきたかっていうとな、今のままのスマスイが2月末で終わるんじゃ。本館だけは2年後の5月までやねんけど、イルカライブ館やラッコ館、レストラン、ワシが住んどる世界のさかな館とか、東側にある15施設を取り壊して新しく整備するんじゃて。さびしいのぅ。
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■ガラスにぶつけて貝割っておったんじゃ。
きょうはラッコ館じゃ。雄のラッキー、雌の明日花が住んどるぞ。22歳同士の仲良しカップルなんじゃ。
いつも多くのお客さんがおるわ。飼育員が激写した2匹のかわいい写真が壁一面に並んどる。
人気者はええのう。
でもな、耳を澄ますと、お客さんの「かわいい」の声に混じって「見えにくい」「写真撮れへんわ」って声が聞こえてくる。行ったことある人は分かるな。展示ガラスが曇っとるんじゃ。
決してスタッフが掃除さぼってるわけちゃうで。よう見てや。汚れやのうて、小さな傷や。1987年にラッコが来てから30年以上、歴代のラッコたちが続けてきた犯行じゃ。
おなかの上で貝を割るのが習性じゃが、何をどう思ったか、ガラスにガンガンとたたきつけて割っておったんじゃ。
だから、ラッコの前脚が届く高さだけが傷だらけになっとる。
ガラスの割れ目ばかり狙う悪ガキもおってな、17年前、通路に水が漏れる事態になった。修理費はなんと3千万円。これにはスタッフも「いたずラッコじゃ済まされない」と頭を抱えておったわ。かっかっか。
今は貝殻を外したエサを与えておる。傷は「ラッコたちが生きた証(あかし)なのです!」との張り紙でフォローじゃ。
実は国内には今、6匹しかラッコはおらん。高齢化で繁殖ができんなってな。世界でも数が減って輸入もなくなって。日本で見られんようなる日も近い。
みんな、スマスイでしっかり目に焼き付けたか。曇っとるけどな。(小谷千穂)
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