<2020年末回顧4~6月>注目集めた記事5選

2020/12/27 12:00

事故発生から約2時間半後の現場。車両はマンションに激しく衝突し、乗客106人が死亡、493人が重軽傷を負った=2005年4月25日、尼崎市内

 2020年も残りわずかとなりました。新型コロナウイルス関連のニュースばかりが目立った印象ですが、この1年、神戸新聞社が配信し、注目を集めた記事を紹介します。 関連ニュース <2020年末回顧7~9月>注目集めた記事5選 <2020年末回顧1~3月>注目集めた記事5選  

     ◇     ◇

尼崎JR脱線事故15年 あの日その現場(上)「人が死ぬってこんなんなんや」
(4月24日公開)

 抜けるように晴れた空の下、目を背けたくなる光景があった。直視できないのに、まぶたの裏に焼き付いている。乗客106人と運転士が亡くなり、493人(神戸地検調べ)が負傷した尼崎JR脱線事故から、25日で15年。いま改めて、あの車両に乗っていた6人と、駆られる思いで救援に尽力した4人の証言に耳を傾けた。(大盛周平、大田将之、名倉あかり、久保田麻依子)
「車窓からは空しか見えなかった。ほとんど雲がない、青い空でした」(当時32歳、会社員女性Aさん=兵庫県西宮市)
 澄み切った青が視界を覆う。座っていたシートが、背中の方に傾いていく。向かいの窓から、見えるはずの民家が消えていた。
 Aさんの職場は大阪の堺筋本町。最寄りの駅からJR宝塚線に乗り、宝塚駅で快速に乗り換える。いつもの電車に乗り遅れた。大阪駅でスムーズに乗り換えられるよう、1両目の後方左側に座った。
 7両編成のJR快速電車は2005年4月25日午前9時4分ごろ、宝塚駅を出発した。中山寺駅、川西池田駅で停車。北伊丹駅の通過は、定刻より34秒遅れ。そんなことを知らない乗客たちも、次の伊丹駅に近づくころ、異常な運転ぶりを察知するようになる。
 伊丹駅手前約643メートル。「停車です、停車です」-。運転席の警告装置から女性の声が響く。だが、ブレーキはかからない。
 進入した2番線ホームを約72メートルオーバーラン。定位置まで時速16キロでバックする電車に、ホームも車内もざわついた。
     ◆
「すごいスピードで。えっ! どうしたん? こんなことあるんやって…」(当時18歳、大学生男性Bさん=伊丹市)
 通学のために伊丹駅ホームにいたBさん。バックしてきた電車1両目の中央付近に乗り込む。
 「やばいな。変な電車やな」。偶然出会った大学の友人と言葉を交わした。
 運転席へ目をやると、若い背中が見えた。「大丈夫かいな…」
 同じホームにいたCさん(当時63歳、会社員女性=川西市)。電車の奇妙な動きにあっけにとられていたが、周りはみんな穏やかに笑っていた。3両目の先頭に乗ると、つり革を持てないほど車内は混んでいた。
 1両目の後方。Aさんは左隣に座る高齢女性と「こんなこともあるんですね」と顔を見合わせた。「脱線」の2文字も、その女性が亡くなることも、Aさんの頭にはない。
 定刻から約1分20秒遅れ。午前9時16分、電車は伊丹駅を出た。ぐんぐんスピードを上げ、猪名寺駅を通過。塚口駅通過時、遅れは1分12秒に縮んでいた。
 時速116キロ。急カーブに突き進む。
 「キィーー」
     ◆
「みんな好きじゃない音。その瞬間、『人が死ぬってこんなんなんや』って」(Cさん)
 制限速度を50キロ近く超えていた。カーブを曲がりきれず、電車は左に傾く。耳をつんざく金属音。
 1両目で座っていたAさん。自然とあおむけに。その上に、人が降ってくる。「重いけど、耐えるしかない」。身を縮め、目を閉じた。すると、今度は体がふっと軽くなった。重なっていた人たちが吹き飛ばされた。人も荷物も、転がるように飛んでいった。
     ◆
「ガンガンガンガン、バンバンバンバンって。『ひゃー』とか『きゃー』とかの悲鳴も上がった。本当に何がなんだか」(Aさん)
 午前9時18分、脱線。転覆した電車は、線路沿いのマンション「エフュージョン尼崎」(尼崎市久々知3)に激突した。
 「私、どこが切れてますか?」。顔中血まみれの人が声を掛けてきた。Aさんは、1両目が突っ込んだマンション駐車場の地下に放り出されていた。


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