深ヨミ

<最終R> 真っすぐな彼に、魅せられた

2021/12/07 17:30

■ボクシング小僧


 野中悠樹選手はとんでもない男である。国内男子史上最年長の43歳で、世界ボクシング機構(WBO)アジア・パシフィック・ミドル級の王者。現在、世界ランキング14位。その魅力に迫ろうと4月に取材を始めた。この間を振り返ると、同世代としての共感と感嘆の連続だったように感じる。


防衛戦に勝利した野中悠樹(左手前)を観客席から見守る兄と母=7月23日、大阪市浪速区、エディオンアリーナ大阪



 共感でいえば、「がんばれ元気」など影響を受けたという漫画はタイトルを聞くだけでピンと来た。ともに1990年代半ばに青春期を迎え、バブル経済こそ崩壊していたものの、「諦め」ではなく、素直に「夢」や「希望」に熱くなれた季節だった。


防衛戦で、父の遺影を手に入場する(右から)桂伸二トレーナーと、野中悠樹=7月23日、大阪市浪速区、エディオンアリーナ大阪



 彼は10代の頃、サッカーやバンド活動などに取り組んでいた。ただ、熱くなれたのかどうかとなると、話を聞きながらもどかしく思うこともあり、「19歳でボクシングを始めたのは、本気で打ち込めるものが欲しかったからではないか」と、しつこく聞いてしまった。


自室で腹筋のトレーニングに励む野中悠樹=尼崎市内



 感嘆したのは、その人柄だ。取材後はいつも最寄り駅まで車で送ってくれ、運転席から降りて一礼する。私は毎回、恐縮していた。


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