【写真上】練習中にリング上でシューズのひもを結ぶ野中悠樹
■プロデビュー
プロボクサーの練習を見ていると、一朝一夕の世界ではないと思い知らされる。足の運びはリズミカルでスムーズ。スパーリングで繰り出すパンチは速く、相手も瞬時に打ち返してくる。減量中になると見る見る体が絞られ、筋肉のよろいに包まれていく。
それでもテレビの世界戦を見ていると、好機の探り合いが退屈に映るのか、「俺でも勝てる」と錯覚する人も多いらしい。そして、ジムの門をたたく。「僕もその1人でした」と、野中悠樹(43)が笑った。
19歳で入門した「尼崎ジム」で練習生を始めた。基礎練習は、例えばジャブだけで10ラウンド。スパーリングでは顔を殴られ、よく鼻血を出した。「なんでやろ、なんでやろ」。パンチの間合いも、動作の理由も分からない。
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