アクリル板の向こう側で扉が開き、刑務官と共に六十男が現れた。グレーの髪は伸びてウエーブがかかっている。ここは神戸拘置所の面会室。男性は判決を数日後に控えた詐欺・業務上横領事件の被告だった。
「初めまして、ですよね?」。目の前にいる私たちを見て、記憶を確かめるように言った。「そうです」と答えると、「ですよねぇ」と言って笑顔を見せ、パイプ椅子に腰掛けた。すぐにほおづえをつくような姿勢で壁にもたれかかった。
「で、何が聞きたいの?」
男性はかつて地域活性化の旗手だった。それがなぜ被告となってしまったのか。それが取材の焦点だった。
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