【写真上】事故を起こした直後のバイクと野中悠樹(左)と、事故当時かぶっていたヘルメット(右)。擦り傷が生々しい=いずれも本人提供
■ジムに入る
野中悠樹(43)がボクシングを始めたころの話をしたい。
19歳の寒い季節のことだ。野中はバイクで山陽自動車道を疾走していた。またがる愛車はほんの数十分前、約140万円で買ったばかり。「うれしくて、飛ばしたくなって」。アクセルを開けるうち、ハンドルが左右にぶれ始めた。最後に見たスピードメーターは「160キロ」だった。
何度も縦回転し「死んだと思った」という。直線道路で通行車両が少なかったことが幸いした。新車のバイクは中央分離帯で真っ二つになったが、野中自身は鎖骨骨折と両手脚がずるむけになったものの、命は奇跡的に助かった。
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