兵庫県の西播磨の山城は、赤松氏の盛衰を軸に歴史の表舞台にたびたび登場するが、史実は未解明の部分が多い。その謎の深さが文学者の想像をかきたてるようだ。昭和の文豪、谷崎潤一郎は、たつの市御津町の室山城跡を巡る抗争史を基に小説「乱菊物語」を世に出した。作中には同町・室津湾周辺の風土や文化がちりばめられる。かいわいを訪ね、今なお読者を獲得する背景を探った。(直江 純)
「此(こ)の泊 風を防ぐこと室の如し」。昨年12月中旬、室津湾を訪ねた。降雪が相次ぐ荒天だったが、播磨国風土記でたたえられる通り、海面は穏やかだった。
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