新型コロナウイルス禍で３年連続の開催見送りが決まった世界遺産姫路城マラソン（神戸新聞社など共催）。２７日にフルマラソンとファンラン（１～５キロ）で計約６２００人が播磨路を駆ける予定だったが、第６波の収束は見通せず、取りやめを余儀なくされた。調整を続けてきたランナーや沿道での応援の準備を進めてきた住民は「仕方ない」とため息交じりに話した。

　「年明けまでは『今回は走れるかも』と期待していましたが…」。出走予定だった会社経営の男性（５４）＝兵庫県姫路市＝は声を落とした。「コースが平たんで走りやすく、人気の大会だった。代替のオンライン大会に出るかどうか、仲間と相談したい」と話した。

　靴の中敷きを製作する専門店を経営する男性（４２）＝同市＝は昨年１２月以降、開催を信じて月間１５０キロを走って調整してきた。「前後の大会が次々に中止になっていたので予想はしていたが、やっぱり残念」といい、「２年半近くフルマラソンを走っておらず、モチベーションの維持が難しい」とこぼした。

　ランナーへのおもてなしとして、コース沿いの同市夢前町で菜の花畑の世話をしてきた農業法人「夢前夢工房」の衣笠愛之（よしゆき）代表（６０）は「今年もきれいに咲いていたのに」と肩を落とした。「菜の花畑までは頑張ろう」と励みに走るランナーも多いといい、「楽しみにしてくれている人のために、来年用の種まきは続けます」と気を取り直した。

　清元秀泰市長は会見で「優先事項は市民の命を守ること。開催すると医療従事者のさらなる負担増も見込まれ、最終的に私の責任で中止を決めた」と話した。（井上　駿、田中宏樹、森下陽介）