「家の近くに謎のガードレールがある」。神戸市垂水区の男性から神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」に、そんな情報が寄せられた。現場に向かうと、車道脇ののり面の下部に、長さ３メートルほどのガードレールが設置されていた。「役に立つとは思えません」と男性。とにかく取材を進めた。（伊田雄馬）

　現場は同区小束山２の閑静な住宅街。道路脇ののり面とコンクリートの基部を隔てる格好で、ガードレールは固定されていた。白い波板の下に隙間はなく、のり面横の民家の基礎部分にほぼ接している。

　近くの住民に聞いても「さぁ…」と首をかしげるばかり。同区内の道路や公園など公共施設を管理する神戸市垂水建設事務所に照会した。過去の記録などを調べてもらい、数日後に返ってきたのは「分からない」という答えだった。

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　のり面は市の所有だ。市に記録がないとすれば、誰かが勝手に設置したということか。一帯の道路の建設中に余ったガードレールを、施工業者が邪魔にならない場所に設置して帰った可能性はないのか。

　同区内の建設会社「窪田工業」を訪ねた。施工業者ではないが、その推論を「それはありません。余ったら別の現場に使えるので、持って帰ってくるはず」と明確に否定した。

　再び現場を訪ねた。謎のガードレールがあるのり面の上に公園がある。その公園からガードレールを見下ろすと、答えが分かった気がした。

　公園の中心から謎のガードレールの方向だけ、生け垣が途切れており、そこに金網が設置されていた。金網の一段下は道路で、そのガードレールの上部にも金網が付けられている。そして、その下ののり面の底に謎のガードレールがある。

　公園からのり面の下までの直線上に、（１）金網（２）金網付きガードレール（３）謎のガードレール－という三重の「防御」が敷かれていた。考えられる目的は、ボール止めだ。公園からボールが飛び出すと、交通量の多い幹線道路まで転げ落ちてしまう。

　確信を胸に再び、垂水建設事務所に取材した。だが、担当者は「ガードレールはあくまでも車を防ぐものだから。可能性は低いのでは」と首をかしげた。やはり記録はなく、担当者は「うちがあんな所に付けるかなぁ」と漏らした。

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　ボール止めでなければ何なのか。途方に暮れていると、電話が鳴った。かつて取材した窪田工業の相談役、窪田義弘さんだ。社員から取材を受けたことを聞き、現場を見に行ってくれたという。

　「記者さん、あれは施工業者の親切心やわ」と窪田さん。着目したのは、のり面と民家の間にあった排水溝だ。溝は途中で途切れ、水が流れるであろう部分にコンクリートで舗装がしてあった。大雨の際、のり面の土砂が流出しないよう、ガードレールを立てたという見立てだ。

　「今は草が土を食い止めて流れないが、施工当時は生えていなかったのでは」と窪田さん。流れた土砂が下流の側溝をふさぎ、水の流れが滞ることも考えられるという。

　確かにプロ視線の有力な仮説だ。だが、もし土砂止めならば、同じ意味合いのガードレールを別の場所でも目にする機会があってもいいような気も…。

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　その後、近くを散歩していた７０代の男性に声を掛けた。男性は「子どもが上るのを防ぐためでは」と一言。公園への近道にのり面をよじ登る子どもを見かけるといい、気持ちばかりの「通せんぼ」ではないかという。「それにしては、高さが足りないけどね」

　防いでいるのは土砂か、ボールか、はたまた子どもか。その後も取材を続けたが、謎のガードレールの正体を知る人はいなかった。投稿者の男性は「ボール止めはあり得そうだが、それにしては高さが低いのでは」と首をかしげた。

　ガードレールの「正体」を知っている方は、ぜひスクープラボまでご一報ください。

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