兵庫県が全国一を争うホタルイカの漁獲量が近年は不安定となっているため、県但馬水産技術センター(香美町)が、日本海で群れの調査に乗り出した。生息する暖水と冷水の境界層を観測し、海底環境の変化と漁場形成の関連性を調べる。近年は都市部にも流通して春の味覚として親しまれており、調査により安定供給を目指す。(金海隆至)
県但馬水産事務所(同)によると、漁期は主に1~5月。漁獲するのは兵庫、鳥取、京都、福井、石川、富山、新潟の7府県で、全国的に有名な富山県のみ定置網で行う。兵庫県でのホタルイカ漁は、まだ名前も知られていなかった1984年、津居山漁協(現但馬漁協津居山支所)の沖合底引き網漁船が水揚げしたことをきっかけに始まった。
県内では現在、豊岡市と香美町、新温泉町の計5漁港で水揚げ。2009~17年の9年間で8回、全国一となったが、最大の17年(約5300トン)と最小の12年(約2千トン)では2・5倍以上の開きがあり、18、19年も3千トン台にとどまった。但馬沖での漁獲量にばらつきがあり、漁業者は島根や山口沖へと向かうことが多いという。
ホタルイカは毎年3~5月をピークに、対馬暖流(暖水)と日本海固有水(冷水)の境界層を遊泳しながら、産卵のために北方の海域からやって来る。水温約3~5度の水深約180~240メートル付近で、境界層と海底の斜面がぶつかるところに漁場が形成される。
調査では、但馬沖約20キロの海底付近2カ所に計器を設置。水塊の流れや水温を観測し、境界層が上下動する幅や変動周期などを調べる。また、沖合底引き網漁船4隻に、網を入れた日時や位置、水深などの記録を依頼し、漁獲量の推移との関連を分析する計画だ。
同センターの大谷徹也主席研究員(56)は「海底付近の環境変化を把握するのは難しいが、但馬の基幹魚種でもあるホタルイカの群れが来遊する動きを解明することで、効率の良い漁業と資源管理につなげたい」と話している。